2013 Fiscal Year Research-status Report
一様な系に現れる異なる統計的性質をもつ乱流域の共存機構の解明
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25400412
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高岡 正憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (20236186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 吉規 同志社大学, 理工学部, 助教 (70402542)
横山 直人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80512730)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 平行平板間乱流 / 長大構造 / エネギー輸送 / 弾性波動乱流 / 乱流の共存 / 非線形エネルギー |
Research Abstract |
「平成25年度の研究計画」に書いたように,流れ方向に非常に長い平行平板間乱流のシミュレーションコードを作成し,予備計算を実施した。その結果,本計算に対して用いるべき計算領域の大きさ等の計算パラメターを決定することができ,統計則を得るために必要な計算時間を見積もることができた。また,予備計算の過程で,大規模構造と呼ばれる非常に長いスケールの乱れの強さや,それらの運動量輸送や乱れのエネルギー輸送への寄与は比較的大きいことが分かり,これらの長大なスケールの乱れの振る舞いを正しく評価するには,本研究で計画する長大な計算領域のシミュレーションを実施しなければならないことが分かった。 加えて,長大な平行周期流を伴う乱流をシミュレーションするコードをMPIを用いて新たに作成した。これは,平行平板間乱流の共存状態の維持機構を調べる数理モデルを構築するのに必要な知見を得るためである。現在,予備計算をしながら解析用の周辺プログラムを開発中である。 薄板の波動乱流では,既にシミュレーションコードは完成しているので,引き続き強・弱乱流の共存状態を調べ,その特徴付けを試みた。非線形性による振動数のずれと線形分散関係が与える振動数の比を,各波数に対する非線形性の指標として定義し,この非線形性の指標が1程度となる波数が,強乱流状態にある低波数領域と弱乱流状態にある高波数領域の境界となることを見出した。系全体の非線形性の指標が用いられることはあったが,本研究では,初めて波数ごとの非線形性を定義し,スケール毎の非線形性の特徴を得ることに成功した。また,1波数に対する非線形エネルギーを適切に定義することができたので,エネルギーの詳細釣り合いが成立し,エネルギーフラックスを定量的に調べることが可能となった。弾性波動乱流では,エネルギーが低波数から高波数へと輸送される順カスケードとなっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平行平板間乱流のシミュレーションコードを作成し,当初の計画どおり,本計算のための計算パラメターの探索を終えた。この予備計算において,乱流中の渦構造の動力学について新たな知見を得ることもでき,成果の一部は九州大学応用力学研究所研究集会で発表した。また,既に九州大学情報基盤研究開発センターの大型計算機PRIMERGY CX400において本計算を実施しており,基礎的な統計量は得られている。この点においては,当初の計画以上に進展している。 数理モデルの構築においては,長大な平行周期流を伴う乱流のシミュレーションコードを作成し,現在,予備計算を行っている。試行錯誤の段階ではあるが,当初の予定からはさほど遅れていないと考えている。 弾性波動乱流に対する研究では,平成24年度にPhysical Review Letterで発表した議論を発展させて,強・弱乱流の臨界となるスケールを同定することに成功した。時間スケールの比が強・弱乱流のどちらが現れるのかの指標となることを,日本物理学会秋季大会で発表し,Physical Review Eに論文として出版した。また,外力や散逸の影響およびエネルギー輸送に関しても日本物理学会年会で発表を行い,2014年3月に論文としても投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本計算を引き続き実施し,渦構造のクラスタの動力学を解析する。このために,渦構造のダイナミックスの1つのサンプルとして,流体の速度場の瞬時データを細かい時間間隔で100フレーム程度保存する。この様なデータを多数採取し,渦構造の時間発展の統計的な振る舞いを調べる。サンプルの採取には数ヶ月を要すると見積もられ,サンプルの採取と並行してそれらの解析を行う。個々の渦構造クラスタの振る舞いが多様性に富んでいる場合は,定性的に共通する部分を抽出しクラス分けを行う。この場合には,さらに多数のサンプルが必要となる。シミュレーションは,これまでと同様に,九州大学情報基盤研究開発センターの大型計算機PRIMERGY CX400において実施する。 数理モデル構築のため,平行周期流を伴う乱流の本計算を行う。まずは,平行周期流の剪断と渦動力学との関係、および、エネルギー収支について調べる予定である。計算には,研究室のワークステーションのみならず,スケール則を調べるための大規模計算には,平行平板乱流と同じく九州大学情報基盤研究開発センターの大型計算機PRIMERGY CX400を利用する。 弾性波動乱流においては,平行平板間乱流との比較のためにも実空間を調べる必要がある。他方,シミュレーションを続ける中で,慣性小領域の統計的性質が(どの物理量を励起するかという)外力に依存するという結果が得られたので,それぞれの物理量の性質から非線形性の役割を解明する。また,ここで得られた知見の一般性を確認するためにも,1次元モデルを含む他の波動乱流系を調べる必要がある。たとえば,水の波などの波動乱流系ではエネルギーフラックスの導出に成功していないが,本研究で得られた「1波数に対する非線形エネルギー」という考え方を適用することにより,これが可能になるかなどである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本補助事業の採択・交付決定の通知の後に、九州大学情報基盤研究開発センターの大型計算機の定額利用を申請したので、利用が7月からとなり当初の予定額より小さくなったためである。定額利用の期間や金額は段階的(離散的)に設定されており、細かな調整が不可能であった。 次年度(2014年度)は、2014年の3月末に九州大学情報基盤研究開発センターの大型計算機の定額利用を申請しており、年度当初から計算機利用費が確定しているので、年度予算は旅費などとして計画的に使用する予定である。残金(45,191円)は、交付決定額の残金に対する消費税増分にも満たないので、申請時の使用計画からの大きな変更は特に必要ないと考えている。
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Research Products
(6 results)