2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400415
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤川 和男 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (30013436)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ①量子力学基礎論(Singapore) / ①不確定性関係(Singapore) / ①CPT対称性(Helsinki) / 場の理論 |
Research Abstract |
今年度は、量子力学の基礎的な側面、すなわち不確定性関係とエンタングルメントに関連したテーマに力を注いだ。結果として、主として、Singapore国立大学の研究者との共同研究が多くなった。まず、申請者が以前から研究していた不確定性関係にまつわる理論的な研究を続けた。主たる研究成果としては、不確定性関係の定式化で基本的になる不偏測定と不偏擾乱という概念は、実は、現れる演算子が発散等を含まず数学的によく定義されている場合には、代数的な矛盾を含むことを示した。これは、例えば、最近のウイーン工科大での実験が素朴なハイゼンベルグ型の不確定性関係を破るのは、この代数的な矛盾として必然的なものとして理解される。この不確定性関係の研究の継続として、Singapore国立大の研究者と共同研究を続け、論文を一篇書き投稿中である。また申請者は、このテーマで国際会議で2回招待講演を行なった。異なる角度からの基礎物理学の研究として、エンタングルメントの判定条件の研究を行なった。特に、Hardyのパラドクスという現象を少し異なる角度から考察すれば、量子力学の確率解釈で基本的になる確率測度の線形性を課した場合は、Hardyのパラドクスとしてはほとんど自明なものしか存在できないことを示した。Hardyのパラドクスと不確定性関係の関連も考察し、論文を投稿中である。さらに、場の理論の観点からエンタングルメントを考察し、スピンの自由度を測ってエンタングルメントを測定すればエネルギー依存性が現れる可能性があること、および弱い相互作用を用いたヘリシティの測定が、超相対論的領域におけるエンタングルメントの測定においてStern-Gerlachの測定に取って代わる可能性を指摘した。この結果も投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の内、Singapore国立大学の研究者との共同研究は相当進み、複数の論文を現在投稿中である。他方、Helsinki大学の研究者との共同研究は、関連問題の検討は進んでいるが、(過去に4篇論文を書いたが)まだ新しい論文にまとめる段階に至っていない。北京の研究者との共同研究は現在進行中であり、論文が2014年度中にまとまる見通しである。国際研究集会での発表は4回行なった。単行本(旧友で故人の外村彰博士関係)も編集を終えて、出版を待つ状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在中国との共同研究に集中しているが、いわゆるCompressed Sensingというテーマと不確定性関係の関連の研究を行っている。この研究をまとめて論文にすること、およびさらに新しい関連した研究を開始することを考えており、総計2ヶ月北京に滞在する予定である。 Helsinki大学の研究者との共同研究の課題であるCPT対称性の破れの可能性、およびその素粒子物理とくに場の理論への意味合いを研究するため2ヶ月Helsinkiを訪問する予定である。また時空の構造との関連も興味のある課題であり、重力理論の専門家がそろうアメリカのStony Brook大学を約1ヶ月訪問して議論を深めて来る予定でもある。 Singapore大学の研究者と始めた量子力学の基礎と量子情報に関連した課題の研究も、日本国内の若い研究者と数値解析を含めた研究を現在進めており、この課題もさらに追求したい。Singaporeの南洋工科大学へも来年の年明けに再び訪問することを検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際共同研究を遂行するための科研費を請求したが、今回は科研費の採用が決まる前に決めた計画が多く、結果として先方が、旅費、滞在費等の諸費用の大部分を負担してくれることになったことが主たる理由である。 今年度は、国際共同研究にふさわしく当方も応分の負担をして、また海外滞在の日数も 増やして、国際共同研究の実を上げたい。
|
Research Products
(10 results)