2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 美徳 東北大学, 教育情報基盤センター, 教授 (20218556)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 群れ / 動力学 / 非線形波動 / ステレオカメラ / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥の群れの集団動力学を解析する上で最も重要なデータである各個体の三次元的な軌跡の推定を、高い空間解像度で行うべく、計測システムに大幅な改良を加えた。具体的には、カーボン素材を用い、屋外でも安定に運用できる形で、ステレオカメラシステムの基線長を約2mに伸張するとともに、カメラの光学系の性能を改善することによって、より広い画角にわたって、計測誤差を従来の1/2以下に抑えることができた。 新たに製作したステレオカメラシステムを用い、宮城県北部で秋から厳冬期にかけて、ムクドリのねぐら入り前の集団飛行、および、マガンのV字飛翔隊形の撮影を多数回実施し、当初の目標であった、カメラから200m程度以内の個体を十分識別した上で、位置を同定できることを確認した。 こうして取得されたステレオ画像データを元に、自主開発を行っている解析ソフトウェアを使って、個体毎の位置、速度、さらに加速度を計算し、いくつかの予備的な知見を得た。そのひとつは、マガンの編隊飛行における「遅いモード」の同定である。マガンの一次元的な飛翔隊形において、相対的な位置変位の揺らぎが波動となって群れの先頭から後方に伝搬する現象が、申請者自身によって報告されているが、その際の個体間相互作用の詳細は不明であった。今年度実施したデータ解析を通じて、飛行方向に対して水平面内横向きに間隔を調整する過程で最も時間遅れが生じており、集団的な波動の伝搬に対して最も寄与することを、定量的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鳥の群れの集団運動を解析するに十分なステレオ動画像計測システムを開発することが、本研究の第一の目的であった。概要にも記したとおり、可搬性を持ちかつ基線長の長いステレオカメラシステムがほぼ完成し、マガンのような大型の鳥であれば、200m程度の範囲まで計測可能であることが確認されたため、その点では、当初の目標は概ね達成されている。その一方、ムクドリなどの小型でしかも羽ばたき周波数の大きな鳥に対しては、現状の60FPSのシステムでは時間分解能が不足することが、データ解析を通じて判明したため、システム開発について、さらなる改良の余地を残している。 本研究の二つ目の目標である、有効相互作用の推定や安定性の議論など、群れの集団運動の数理物理的な解明についても、概要に記した内容を含め、フィールド計測によって得られた定量的なデータに基づいた分析を、最終年度に向けて、進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1、2年目は、三次元計測システムの開発に時間を割き、マガンなどの大型の鳥の群れを対象とした場合、ほぼ当初の目標を達することができた。さらに、ムクドリなどの小型の鳥の群れについても適用可能とするために、高速なフレームレートにまで対応できるように、部分的な改良と調整を施す計画である。 さらに、鳥の群れと同様の手法で、水槽内の魚の群れについて三次元計測を実施できないか、他大学の研究者と協力しながら、検討を行っているところで、水中でのステレオカメラの校正手法などの開発に、すでに着手している。最終年度は、鳥のみならず、本研究で得た手法や知見を、広く「群れの科学」に適用する可能性も探っていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を効率的に推進したことによるもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度請求額と合わせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)