2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物物理 / ソフトマター / 細胞 / 生体膜 / シミュレーション |
Research Abstract |
細胞内には多様な形態の細胞小器官が見られるが、それらの形態の形成機構はよくわかっていないものが多い。本研究では膜タンパク質による架橋に注目して、細胞小器官の形態がどのように形成されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。 初年度は膜タンパク質による2つの膜の架橋、及び、高分子のグラフトによる膜の物性変化について研究した。どちらもメッシュレス膜模型を用い、分子動力学計算を行った。 膜間の架橋において、膜のゆらぎ抑制に起因する引力が働くことが知られていたが、非常に弱く膜の構造に大きな影響を与えるとは考えられていなかった。3枚以上の膜を架橋する場合や、架橋タンパクが周囲の脂質膜を硬くする場合、このエントロピー引力が増加し、架橋間の凝集を引き起こすことを明らかにした。架橋間の相互作用を有効ポテンシャルで表し、2次元のモンテカルロ計算も行った。シミュレーション結果はこの有効ポテンシャルでよく説明できる。周囲の脂質膜を硬くする場合は枯渇相互作用で理解することができる。 また、高分子のグラフトによって、膜端や2成分膜の相境界の線張力が減少することを明らかにした。これは境界付近では高分子がより多くの空間を動けるので鎖配座エントロピーが大きくなることによる。線張力変化の大きさはサイズに依存し、小さな膜ドメインを安定化することができることも分かった。生体内では多くの生体膜は糖鎖で覆われているが、糖鎖によって物性が大きく変化していることが考えられる。また、理想鎖については解析的にも線張力変化を求め、計算結果を良い一致を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画していた膜タンパク質の架橋による相互作用に加え、高分子グラフトの効果についても研究した。生体膜に糖鎖がグラフトされていることはよく知られているが、膜物性に対する効果については注目されていなかった。今回、特に膜上の相分離に対して、大きな影響があることがわかり、糖脂質が集積するラフト構造の安定性に糖鎖が寄与していることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
微小管やBARドメインタンパク質など硬い棒状もしくはバナナ状の物体の吸着による膜の形態が変化することが知られている。分子シミュレーションを用いてこのような吸着粒子間の相互作用と膜の形態に対する影響について研究する。 また、ミトコンドリアは2つの膜からなり、葉巻状の外膜の中に多数のクリステと呼ばれるひだのある内膜がある。人体ではクリステは平板状であるが、他の生物ではチューブ状のクリステもある。ベシクルに内包されたベシクルの形状を調べることで、外膜による空間拘束が内側のベシクルの形状に与える影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き研究を継続するために次年度も予算が必要である。 シミュレーションを円滑に進めるために計算機を購入する。 消耗品としてハードディスクなど周辺機器を必要に応じて購入する。 また、ポルトガルで夏に開催されるLiquid matter conference 2014に参加するほか、国内外の研究会出席のための旅費を計上している。
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Research Products
(8 results)