2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物物理 / ソフトマター / 細胞 / 生体膜 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内には多様な形態の細胞小器官が見られるが、それらの形態の形成機構はよくわかっていないものが多い。本研究では膜タンパク質による架橋に注目して、細胞小器官の形態がどのように形成されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。 今年度は生体膜上に曲がった棒状の物体がある場合の生体膜の変形について研究した。棒はBARドメイン等生体膜に吸着したタンパク質もしくはタンパク質に架橋された微小管などを模型化している。棒同士に直接の引力を与えず、膜を介した相互作用について調べた。 棒がバナナ状の曲がっている場合、棒に沿った方向のみ自発曲率を持つ。この自発曲率の異方性に注目した。その結果、通常の相分離と異なり、この集合は棒の縦と横方向の2つの1次元の集合に分かれて起こることが明らかとなった。円筒膜上では、棒の自発曲率を上げていくと方位角方向にまず、相分離が起こり、膜は楕円に変形する。このように膜の変形と凝集が同時に起こる。さらに曲率を上げると、円筒軸方向に分離する。ベシクルでは棒の曲率を上げていくと赤道上への集合がまず起こり、その後、一箇所に集合する。集合に伴いベシクルはまず、扁平の楕円、つぎに餅をつまんだ時に生じるようなこぶのある状態へと変形する。膜全体が一様な自発曲率を持つ場合は、さらに棒の曲率を上げるとチューブ状の突起を形成する。このように異方性な自発曲率は通常の等方的な自発曲率とは異なった膜の形態変化を生み出すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に研究は進んでいる。初年度の成果報告書の今後の推進方策の欄で述べたバナナ状の物体の吸着による膜変形については上記したようにまとまって成果が得られた。その発展である側方の自発曲率を含めた系の研究で膜上のネットワーク構造がチューブ形成に大きな影響があることがわかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
バナナ状の物体の効果についての研究をさらに発展させると共に、大きなgenusをもったドーナツ状ベシクルの形状を研究する。genus-1、genus-2において、球状ベシクルとは異なった形状がすでに得られている。より大きなgenusの形状に対する影響を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
引き続き研究を継続するために次年度も予算が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シミュレーションを円滑に進めるために計算機を購入する。 消耗品としてハードディスクなど周辺機器を必要に応じて購入する。 また、ドレスデンで7月に開催される10th European Biophysics Congressに参加するほか、国内外の研究会出席のための旅費を計上している。
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Research Products
(6 results)