2013 Fiscal Year Research-status Report
中性子スピンエコーを用いた生理活性を持つリン脂質二分子膜のメゾスコピック物性研究
Project/Area Number |
25400433
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
遠藤 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40447313)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リン脂質二重膜 / 中性子小角散乱 / 中性子スピンエコー / 膜ダイナミクス / ハイブリッドリポソーム |
Research Abstract |
生体膜は細胞を外界と隔離するだけではなく、生命活動を維持する上で重要な種々の機能を有する事が明らかとなってきている。本研究の目的は、生理活性を有するリン脂質とポリエチレン系界面活性剤混合小胞体(以下“ハイブリッドリポソーム”と呼ぶ)をを生体膜のモデル系として用い、メゾスコピックな時空間スケールで物質のダイナミクスを測定できる中性子スピンエコー(Neutron Spin Echo: NSE)法に中性子小角散乱(Small-angle Neutron Scattering: SANS)法を組み合わせ、その機能と構造及びダイナミクスの関連を分子論的に検証することである。ハイブリッドリポソームはガン細胞に自発的細胞死(アポトーシス)を誘導する事が知られているが、分子論的な反応経路は未だ解明されていない。NSEを用いる事でハイブリッドリポソームのナノ秒オーダーでのダイナミクスを精密に測定し、ハイブリッドリポソームの有する生理活性と動的性質との相関を検証することで、ハイブリッドリポソームが誘導するガン細胞のアポトーシス経路を物性論に基づいて理解することを研究の目標としている。 平成25年度は、試料であるハイブリッドリポソームを用いた光散乱実験及び中性子小角散乱実験を行い、試料の形状に関する情報を得た。その結果、試料の粒径およびその分布に関して、ナノメートルスケールで検証することができ、その安定性について確認することができた。また、界面活性剤/リン脂質の比、及び温度を変化させる事で形状及び安定性がどの様に変化するかについて検証した。その結果、ハイブリッドリポソームの安定性を著しく損なう条件を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動的光散乱および中性子小角散乱法を用いて、ハイブリッドリポソームの形状評価まで行ったが、平成25年度に予定していた中性子スピンエコー測定を用いての動的性質を評価することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、日本で唯一測定可能な中性子スピンエコー装置iNSEが設置されている研究用原子炉JRR3が東日本大震災の影響で停止中であり、再稼働の見通しが不明のため、今年度は海外の施設を用いての実験を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、中性子スピンエコー測定を行わなかった為、試料調整に関する費用等を今年度に繰り越した。 中性子スピンエコー測定を海外施設で行う予定の為、試料調整費と旅費を多めに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)