2014 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ帯振動円偏光二色性計測による蛋白質高次構造ダイナミクスの観測
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25400436
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野竹 孝志 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (70413995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ / タンパク質 / コンフォメーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、実際に血清中の輸送タンパク質であるアルブミンを用いて、その二次構造の変化を検出する手法を確立することに注力した。従来から二次構造の診断に広く利用されている紫外領域の円偏光二色計測と、蛍光分光光度計を用いた検証を試みた。 アルブミン試料は凍結乾燥された試料を用いた。アルブミン試料と蒸留水によりそれぞれに最適な濃度の水溶液を作成し計測を行った。アルブミンの二次構造はアルファヘリックスが支配的であることが知られており、二色性計測においてはアルファヘリックスに特徴的なスペクトルが観測されたが、高強度テラヘルツ光を照射した試料に対しては円偏光二色性の信号強度が減衰したデータが得られた。これは高強度テラヘルツ光によりアルファヘリックス構造が破壊された、あるいはランダムコイルなどの他の二次構造へ変化した可能性を示唆するものである。また、蛍光分光測定に関しても、高強度テラヘルツ光を照射した試料に関してはいわゆる蛍光のクエンチングが観測された。アルブミンの蛍光は構成アミノ酸の一つであるトリプトファンに起因すると考えられるが、トリプトファンを取り巻く周囲環境が変化し、蛍光特性が変化した可能性がある。これも二次構造の変化を示唆するものである。 今後はテラヘルツ周波数帯の二色性計測に取り組み、従来の紫外領域二色性計測から得られる構造情報との差異や、テラヘルツ光照射による高次構造変化の更なる検証などを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ周波数帯の円偏光制御素子は開発に成功しており、タンパク質試料の二次構造を従来の手法を用いて計測する事にも成功している。今後は信号強度の極めて弱いテラヘルツ帯の円偏光二色性信号をいかに計測するかに取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を遂行する過程で、高強度テラヘルツ光照射によりタンパク質の高次構造変化を示唆するような結果も得られており、大変興味深い。今後はテラヘルツ帯の振動円偏光二色性計測によるコンフォメーションダイナミクスの観測を目指すだけでなく、高強度テラヘルツ光によるコンフォメーション制御を目指した研究も進める。
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Research Products
(4 results)