2015 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ帯振動円偏光二色性計測による蛋白質高次構造ダイナミクスの観測
Project/Area Number |
25400436
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野竹 孝志 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (70413995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ光 / コンフォメーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、実際にテラヘルツ周波数帯においてタンパク質の振動円偏光二色性計測に取り組んだ。開発した偏光制御素子を用いて、光注入型テラヘルツパラメトリック発生器からの直線偏光を、高精度で左右両円偏光へと変換し、ペレット化したアルブミン蛋白試料に照射して左右両円偏光に対する透過率の差異を計測した。しかしながら、エラーバーの範囲内で有意な差は簡観測できなかった。 一般にテラヘルツ周波数帯における振動円偏光二色性の信号強度は、電子遷移に基づく紫外や可視領域の電子円二色性強度に比べて1/1000程度となる事が理論的にも予想されており、世界的にも前例のない極めてチャレンジングな計測である。今後は、テラヘルツ帯の左右両円偏光を作成するだけではなく、これらを高速で変調する技術の開発が必要であり、ロックイン検出などと組み合わせた計測に取り組む必要がある。 また今年度は概算によりタンパク質コンフォメーション制御の可能性検討も行った。タンパク質分子1molの室温における熱エネルギー揺らぎは、例えばタンパク質分子1個の質量を5×10^-20 g、定圧比熱を1.3 JK-1g-1と仮定すると約1.6×10^5 J/mol程度となる。当然熱揺らぎは等方的かつ非選択的であるため、平均的なタンパク質系の振動等の内部自由度を10^5と考えると、これらに1.6×10^5 J/molを割り振れば1自由度あたり1.6 J/molの熱揺らぎである。更に現実的な条件として1mgのアルブミンタンパク(分子量66,000)を考えると、1自由度当たり24nJの熱揺らぎとなる。一方で我々の開発したテラヘルツ光源は最大10μJのパルスエネルギーを有し、かつコヒーレントで周波数可変である為、選択的な振動モード励振が可能である。従って高強度テラヘルツ光照射により、熱揺らぎを超えてコンフォメーションできる可能性を理論的にも明らかにした。
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