2014 Fiscal Year Research-status Report
空間的拘束下でフラストレートした液晶の秩序形成とダイナミクス
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25400437
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 順一 独立行政法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (90392654)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 液晶 / 連続体シミュレーション / キラリティ / 欠陥 / コレステリックブルー相 / 光学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルクにおいてコレステリックブルー相を示すキラル液晶を平行平板間の薄い空間に閉じ込めた際にできる特異な秩序構造について,光学顕微鏡によって観測される実空間像の再現を目的に,平面波展開に基づく数値計算(以下では「光学計算」とする)を行なった.周期境界条件をセルに平行な方向に課すことのできる十分小さい系の場合について,計算によって得られた複数の秩序構造に対する光学計算を行い,実空間像における反射光の強弱の分布などについて,実験結果をほぼ完璧に再現する計算結果が得られた.引き続いて光学計算のスキームの改良を行い,これまでのスキームよりも大きな系に適用が可能となるようにした.改良したスキームを用い,熱的ゆらぎによって生じる,周期性を必ずしも仮定できない局所的な構造について,実空間像の数値的構築を現在行なっている.またこの改良によって,バルクのコレステリックブルー相の共焦点顕微鏡像の数値的解明も可能になると考えており,予備的な計算を行ない始めたところである.これらの問題で現れる秩序構造の周期は数百nmと可視光の波長に近いものであり,数値計算による実空間像の構築は非常にチャレンジングな問題である.そのような問題に対する解決の端緒を与えたことは,今年度の大きな成果であり,今回開発した光学計算のスキームは,液晶の問題に限らない幅広い問題に対して適用可能であると考えている. その他の問題として,欠陥を含むパターンをインプリントした表面からなるネマチック液晶セルの秩序構造を検討し,バルクの液晶中に生じる欠陥線の構造に関する実験結果を数値的に再現することに成功した.こちらの成果も,空間的拘束によってフラストレートした液晶が形成する新規な秩序構造の理論的実証として意義のあるものと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薄いコレステリックブルー相が示す特異な秩序構造について,光学顕微鏡によって得られる実空間像が計算できるようになったことは大きな進展であるし,その秩序構造の揺らぎについても興味深い成果を得つつある.パターンを有する表面がバルクの液晶にもたらす欠陥構造についても新たな知見を得ることができ,空間的拘束によるフラストレーションに関連する新規の問題を開拓することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
光学計算のために開発したスキームは現在のところ直接法に基づいているが,緩和法に基づくスキームの開発が行なえれば,さらに大規模な系に適用可能になる.緩和法の適用は容易ではないという感触を得ているが,可能であれば,そのような方向性での計算スキーム開発を行ないたい.また,溝中の液晶が形成する秩序構造については,計算の効率を上げる改良を施し,実験で見られるの構造との対比がより直接的に行なえる計算結果を得てゆく.
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Causes of Carryover |
現在の残額によって買えるスペックの劣る計算機を無理に追加で購入するよりも,次年度の予算を足して次年度初頭に計算機を購入した方がスペックの良い計算機を購入でき,費用対効果の観点から優れていると考えたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計算機の購入に用いる.
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