2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25400459
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
柴田 直樹 (小林) 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (30272660)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | InSight / 火星 / 内部構造 / 地震波 / 自由振動 / 脈動 / 励起 / 探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は人類初の本格的な火星内部構造探査 InSight プロジェクトにおける主力観測機器である広帯域地震計の記録から火星の内部構造の情報を引き出すための手法と計算コードを開発することが目的である.火星の地震活動については全く未知であるが,火星は地球と同じく大気をまとった惑星である.地球では研究代表者が提唱し,その存在が確認されている常時自由振動がある.その励起源として大気や海洋の運動による擾乱が有力である.火星においても常時自由振動や大気起源の脈動の存在が期待される.そこで,大気擾乱をモデル化して観測可能なレベルの常時振動が励起されるかを推定することは InSight 計画においても重要な課題である.もし,常時自由振動や脈動が観測できるとすれば,地震活動が未知の火星の内部構造の情報を引き出せる可能性がある.しかし,地球で観測されている mHz 帯の常時自由振動については,次元解析的には地球と同程度の励起量が期待されるが,火星探査機パスファオンダーの大気圧力変動を基に推定すると InSight 搭載の地震計の能力では観測は容易でないことが分かった.そこで,地殻や浅部の構造に敏感な mHz帯よりずっと短周期の脈動での可能性を探った.表層100mのメガレゴリス層と50kmの地殻を想定し,大気擾乱によってそれらの構造の推定が可能な脈動が励起されるか見積もった.結果は,前者に関しては一桁,後者に関しては3桁ほど検出限界に比べて小さいものであった.パスファインダーの大気圧変動が InSight の着陸地点の変動を代表しているか不明であるため,ごく表層の構造へのアプローチに関しては可能性がある.しかし地殻やマントル構造に関しては厳しい結果と言える.本結果は日本惑星科学会秋季大会にて報告した.また,地震学的構造探査による構造推定の要求精度についての考察を月地殻研究会において報告した.
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