2014 Fiscal Year Research-status Report
熱潮汐波と子午面循環に着目した金星大気スーパーローテーションの成因解明
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25400470
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高木 征弘 京都産業大学, 理学部, 准教授 (00323494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スーパーローテーション / 惑星大気 / 大気大循環 / 熱潮汐波 |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星気象学におけるもっとも重要な問題のひとつである金星大気スーパーローテーションについて,熱潮汐波メカニズム(TTM)とギーラッシュメカニズム(GM)という2つのメカニズムが提唱されている。しかしながら,雲層のスーパーローテーションの現実的な南北構造を再現するには,TTM と GM の両メカニズムが働くことが必要であることを示した。今年度は下層大気のスーパーローテーションに着目し,これらのメカニズムがスーパーローテーションの生成に必要な固体惑星からの運動量くみ上げに,どのように寄与しているかを検討した。その結果,大気と固体惑星の角運動量交換をコントロールする大気の最下層では,平均東西流の符号や強度,鉛直構造が仮定する太陽加熱分布に強く依存することが示された。この結果は,雲層のスーパーローテーションだけでなく,最下層の平均東西流生成にも TTM と GM の両方のメカニズムが重要であることを示唆している。以上の結果は,研究雑誌に投稿準備中である。 モデル中で観察された雲層高度の大気波動についても解析を進め,それが傾圧不安定によって励起されていることなどを明らかにした。詳細は研究雑誌に掲載済みである。 今年度はさらに,金星上層大気の極域の構造に関する解析も行った。その結果,本研究で構築した大気大循環モデルでは現実的な周極帯状低温域(コールドカラー)が再現されていることが明らかになった。周極帯状低温域の基本構造は雲層より上の高度で大気スーパーローテーションが熱潮汐波によって強く減速されることによって作られる。また,周極帯状低温域の内部には観測と非常によく一致する高温のダイポール構造が形成された。今後,Venus Express の電波掩蔽観測データとの比較を含め,このダイポール構造の成因についても解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来,熱潮汐波メカニズム(TTM)とギーラッシュメカニズム(GM)は排他的に作用すると考えられていたが,スーパーローテーションの南北構造に着目することにより,双方が重要であることを明らかにできた。特に,TTM と GM を両方考慮することにより,これまで数値モデルで再現されていなかった現実的な周極帯状低温域(コールドカラー)や,極渦中のダイポール構造など,金星上層極域大気の力学的構造の再現にも成功したことは, TTM と GM の両方の重要性を強く支持するものと考えられる。26年度は研究計画に沿って下層大気における TTM と GM の相互作用を中心に検討し,大気最下層における平均東西流に対する TTM とGM の寄与を調べた。その結果,最下層の平均東西流の符号や強度,鉛直構造が仮定する太陽加熱分布に強く依存することが明らかになった。この結果は,最下層の平均東西流が最下層の平均子午面循環だけでなく,主に雲層で励起される熱潮汐波にも強く影響されることを示唆しており,大気スーパーローテーションの生成に TTM と GM の相互作用が重要であることを示している。また,26年度後半からは,次年度以降のために精密放射モデルを GCM に組み込む作業に着手しており,これも研究計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降も研究計画に沿った研究を推進する予定である。すなわち,熱潮汐波メカニズム(TTM)と子午面循環メカニズム(GM)の相互作用の検討をさらに進め,金星大気スーパーローテーションを成因解明する。同時に,精密放射 GCM によるスーパーローテーションの再現,初期値・パラメータ依存性の検討を行うことにより,金星大気大循環のより現実的なシミュレーションや,金星大気スーパーローテーションの力学バランスを広いパラメータ空間の中に位置づけるといった研究を行う予定である。平成27年12月には金星気象衛星あかつきが金星周回軌道に再投入される見込みであり,あかつきの観測計画に有用なデータ提供や,あかつきの観測結果を力学的に解釈するための準備もあわせて行いたい。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会(EPSC 2014)への出席が,家族の急病により,急遽取りやめとなったため。また,比較的低解像度の数値計算によってパラメータスタディをおこなった結果,今年度は外部記憶装置を追加購入する必要が生じなかったために,繰り越しの必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計算機および外部記憶装置の購入(物品費)と国際学会への出席(海外旅費)に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)