2013 Fiscal Year Research-status Report
巨大火山噴火が気候・生態系へ及ぼす影響:地球システムモデルによる解析
Project/Area Number |
25400472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
小畑 淳 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (20354508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 泰宙 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50435591)
足立 恭将 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (90354456)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 二酸化硫黄 / 硫酸エアロゾル / 日射減少 / 寒冷乾燥化 / 陸域植生衰退 |
Research Abstract |
火山噴火によるエアロゾル粒子の増加は一時的ではあるが日射を遮断し、気温低下・植生衰退などの環境変動を引き起こす。その総合的・定量的理解は今までの観測・古気候研究によると不確かであるため、気象研究所地球システムモデル(大気・海洋・陸域及び生物圏の諸過程を整合性良く組み込んだ数値モデル)を用いた火山噴火影響評価実験を行い理解を進展させる。本モデルにはエアロゾルモデルが組み込まれており、噴火に伴い放出される二酸化硫黄の酸化による硫酸エアロゾルの生成過程を計算できる。25年度はまず極端な例として、過去10万年で最大と言われる約7万年前のトバ(スマトラ島)火山噴火を対象とした実験を行った。この時の二酸化硫黄放出量は、ピナツボ火山噴火(1991年、約0.5℃の気温低下をもたらした)の300倍程度と考えられており、今回の実験では同量の二酸化硫黄を成層圏に与えた。その結果、噴火後数年間で、地表面への日射75%減少、気温10℃以上低下、降水量80%減少、これにより植物生産70%減少、植生量が半分以下に減り復活には数十年以上要するなど、生態系を脅かす激しい寒冷乾燥化が示された。 これに加えて、噴火の規模(二酸化硫黄放出量)を変えた実験も行った。ピナツボ噴火の数十~数百倍の範囲では、日射減少・気温低下・降水減少・植生衰退など気候・生態系の変動の大きさは噴火規模の平方根にほぼ比例することが明らかになった。また、ピナツボの数百倍規模の噴火では、大気から硫酸エアロゾル粒子が除かれた後、寒冷乾燥化による植生枯死と森林火災から放出された二酸化炭素の温室効果で後には逆に温暖化した影響が残るなど、100年程度では初期状態に戻り難い現象であることが示された。以上の様な地球システムモデルによる巨大火山噴火の影響評価は我が国では初めてであり、古環境変動解明から将来の環境予測まで幅広く参考資料として貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度に予定した最も重要な研究として、人類が経験した中で最大級の火山噴火を対象としたモデル実験による環境影響評価を行い、また、噴火規模の異なる実験を幾つか行って噴火規模と気候・生態系へ及ぼす影響を定量的に対応付けることが出来た。これらの成果について、論文発表は未達成であるが、国内外の関連学会で発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、今までのモデル実験結果における気候・生態系の各要素(大気化学・放射、気温、降水量、陸域及び海洋の炭素循環など)の変動について詳細な解析を行う。また、モデルが複雑であることから多くの計算機資源(計算時間・記憶容量)を必要とするため、未達成の実験(噴火時のエルニーニョの状態や季節の違いによる比較実験など)がある。25年度未達成の数値実験は主に、噴火時の気候・生態系の違いによる影響を調べる初期値比較実験であるが、本研究分野の最新状況を参考に優先順位(例、最初に季節比較、次にエルニーニョ・ラニーニャ比較)を付けることで効率的に実験を行い、研究を推進させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に予定していた論文作成数や学会発表数が、研究進捗状況により、予定より少なかったためである。 25年度中に予定していた英文校正、投稿料及び学会旅費等を26年度に実行することとする。
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Research Products
(12 results)