2014 Fiscal Year Research-status Report
巨大火山噴火が気候・生態系へ及ぼす影響:地球システムモデルによる解析
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25400472
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
小畑 淳 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (20354508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 泰宙 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50435591)
足立 恭将 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (90354456)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 二酸化硫黄 / 硫酸エアロゾル / 日射減少 / 寒冷乾燥化 / 陸域植生衰退 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
火山噴火によるエアロゾル粒子の増加は一時的であるが地表面への日射を遮断し、気温低下・植生衰退などの環境変動を引き起こす。その総合的・定量的理解は今までの観測・古気候研究によると不確かであるため、気象研究所地球システムモデル(大気・海洋・陸域及び生物圏の諸過程を整合性良く組み込んだ数値モデル)を用いた火山噴火影響評価実験を行い理解を進展させる。本モデルにはエアロゾルモデルが組み込まれており、噴火に伴い放出される二酸化硫黄の酸化による硫酸エアロゾルの生成過程を計算できる。26年度は、25年度(初年度)に行った巨大噴火による環境変動の概要の把握に続いて、噴火の季節や緯度による環境変動の違いを調べた。 まず、過去10万年で最大級のトバ火山噴火(スマトラ島、約7万年前)について、北半球夏のモンスーンへの影響を見るため、噴火を「春・秋」即ちモンスーン「前・後」とした2つの実験を行った。世界規模の激しい日射減少・寒冷乾燥化・植生衰退は両実験共にほぼ同じであったが(25年度解析済)、モンスーン「前」噴火の実験では、大量の硫酸エアロゾル粒子が冬に高緯度へ輸送・除去される前の夏に低緯度上空に漂い、日射が激しく減少して早くも噴火の年にアジア及び西アフリカのモンスーンが消滅、熱帯林の枯死が顕著となった。 次に、北半球の中緯度と高緯度の噴火(例:10世紀、中朝国境の白頭山とアイスランド火山の噴火:1991年のピナツボ噴火の数倍規模)を比較した実験では、中緯度の噴火の方が成層圏において硫酸エアロゾル粒子がより広く地球を覆うため、北半球中高緯度だけでなく低緯度や南半球の寒冷化も顕著となり、世界平均での日射減少・寒冷乾燥化が5割程度激しくなることが分かった。以上、噴火の季節や緯度により世界規模や地域別の影響が異なることが明らかになり、噴火後の季節から数年の環境・気象予測に役立つ成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度に予定した重要な研究として、噴火の季節や緯度の違いによる比較実験を行い、気候・生態系へ及ぼす影響を定量的に分類することが出来た。これらの成果について、国内の関連学会で発表することは出来たが、前年度の成果も含めて論文発表は未達成である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、今までのモデル実験結果における気候・生態系の各要素(大気化学・放射、気温、降水量、大気・海洋の循環、陸域及び海洋の炭素循環など)の変動について詳細な解析を行う。これらの解析を基礎とした論文を最終年度である27年度に総括として発表出来る様、研究を推進させる予定である。
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Causes of Carryover |
26年度に予定していた論文作成数や学会発表数が、研究進捗状況により、予定より少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度中に予定していた英文校正、投稿料及び学会旅費等を27年度に実行することとする。
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Remarks |
上記のwebページは気象研究所作成であり、本研究課題の火山噴火実験に用いる気象研究所地球システムモデルの仕組みを紹介している。
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Research Products
(7 results)