2013 Fiscal Year Research-status Report
太陽圏外縁部に分布する高エネルギー粒子の生成機構の解明
Project/Area Number |
25400475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坪内 健 東京工業大学, 理工学研究科, 流動研究員 (60397601)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宇宙科学 / 宇宙空間 / 宇宙線 / 超高層物理学 / プラズマ・核融合 / 粒子加速 / 太陽圏 |
Research Abstract |
太陽風プラズマで占められた領域「太陽圏」が銀河系内の星間物質と接触する圏界面内部に分布しているkeVからMeV領域の高エネルギー粒子生成を担う物理プロセスの解明を目指す本研究において、平成25年度は(1)太陽圏内部の衝撃波によるピックアップイオンの加速過程および(2)太陽風プラズマ中のヘリウムイオンが地球磁気圏の定在衝撃波(バウショック)通過時に磁場にピックアップされる過程について、それぞれ数値シミュレーションによる解析を進めた。 (1)太陽圏外縁部における終端衝撃波単独での粒子加速では到達可能なエネルギーが低すぎる問題を解決する要因を、太陽圏内部における補助的な加速過程に求めた。着目したのは高速太陽風と低速太陽風の相互作用から生成される衝撃波で、高エネルギー粒子の主成分であるピックアップイオンが衝撃波を挟んで上下流域を往復する際のローレンツ力のバランスの崩れによって正味の加速が磁場方向に働くという、従来の理論とは異なるタイプの加速プロセスが示された。その結果、イオンの運動が磁力線に沿うものとなり、高速ー低速流パターンが連続して現れる状況ではエネルギー損失を抑えて複数の衝撃波間を行き来することが可能になり、単独の衝撃波では実現困難だった100keVに至る加速の達成が確認できた。 (2)磁気圏観測衛星Geotailが捉えた、バウショック下流側でヘリウムイオンが速度空間上でリング状の分布を示す現象に対して、太陽風の衝撃波通過時におけるプロトンとヘリウムイオンの減速度の違いから発生する速度差によってヘリウムイオンが磁力線の運動に引き込まれた結果であることを数値シミュレーションによって示した。このリング状分布は不安定なため一般には短時間で崩壊するが、分布形状が長時間維持されるための太陽風条件を特定し、太陽圏外縁部におけるピックアップイオンの安定性を議論する上で重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を通じ、研究目的である太陽圏外縁部に分布する高エネルギー粒子源としてのピックアップイオンの重要性が改めて明らかとなり、また本研究の主手法としている数値シミュレーションがこの物理プロセスの解明に大きく寄与している。人工衛星の観測データから太陽圏内部でのイオンのピックアップ過程を直接検証する研究を新たに始めた影響で、当初の計画にあった3次元シミュレーションコードの開発には若干の遅れが出ている。しかしこの新規研究成果は本研究課題を推進していく上で、特にピックアップイオンのエネルギー分布の安定性に関する理解を深める意義があり、研究目的の遂行に本質的な前進をもたらすものであることから、全体としては順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に従い、太陽圏外縁部プラズマ環境の数値モデリングおよびこれに適合するシミュレーションコードの開発を進めるとともに、論文・学会発表等を通じた成果公開も積極的に行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ解析用ワークステーションの購入金額が予定額より安く済んだ。 新たに国際会議(URSI General Assembly、北京、2014年8月、招待講演)に参加するための旅費に使う。
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