2013 Fiscal Year Research-status Report
阿蘇-4巨大噴火直前に流出した高遊原溶岩の物質科学的研究
Project/Area Number |
25400491
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
長谷中 利昭 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50202429)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 巨大カルデラ噴火 / 阿蘇-4火砕流 / 高遊原溶岩 / マグマ供給系 / 前駆現象 |
Research Abstract |
巨大噴火に先立つ地下のマグマ溜りの物理化学過程を解明できれば,低頻度ではあるが将来必ず起こる巨大噴火の予知に役立てることが可能である.9万年前に起った阿蘇-4カルデラ噴火の前にカルデラ外に流出した高遊原溶岩は,巨大噴火直前のマグマ供給系に関して希少かつ重要な情報を与えてくれる.本研究の目的は,高遊原溶岩および噴出源の大峰火砕丘と阿蘇-4カルデラ噴出物に対して,両者の化学組成,鉱物組成を詳しく調べ,地下のマグマ溜まりで起った変化を捉えることである. 高遊原溶岩台地の側端崖,末端崖の溶岩試料,噴出源の大峰火砕丘のスコリア試料,阿蘇-4火砕流堆積物試料を採集した.阿蘇-4火砕流についてはWatanabe(1978)が記載した最下位の小谷(おやつ)火砕流,苦鉄質成分と珪長質成分の混合が認められる弁利(べんり)火砕流を採集した.国土交通省九州地方整備局,熊本河川国道事務所に保管されている高遊原溶岩27本のボーリングコアのうち,代表的コア本を等採集した. 採集した火山岩試料のうち代表的な試料について薄片を記載し,モード(体積)分析を行った.岩石粉末試料からガラスビードを作成し,北九州自然史博物館の蛍光X線分析装置で主成分元素と一部の微量元素の測定をした.全岩分析で得られた火山岩試料の分析値の組成変化の幅について,その変化幅を作ったメカニズムを検討した.結晶分化作用モデルで検討した結果,高遊原溶岩と阿蘇-4カルデラ噴出物は異なった分化トレンドを描くので,異なる場所において結晶分化作用を行ったことがわかった.すなわち,巨大噴火を起こしたマグマ溜りとは別の派生したマグマ溜まりが存在したことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高遊原溶岩台地側端崖,末端崖から採取した溶岩試料と、大峰火砕丘から採取したスコリア試料,国土交通省九州地 方整備局,熊本河川国道事務所のボーリングコア3本から採集した試料の薄片観察,全岩化学分析を行った.ボーリングコア の観察によると高遊原溶岩は上部自破砕部(平均 25 m)、塊状部(平均 63 m)、下部自破砕部(平均 6 m)の3つに分けられることがわかった.化学分析結果からも塊状部の均質性が確認でき,単一のフローユニットであることが確証できた.溶岩の上部自破砕部ではそれを覆う阿蘇-4 火砕流堆積物の間には土壌を挟まぬことを観察したので,高遊原溶岩を時間間隙をおかずに覆ったことは間違いない.今年度は高遊原溶岩と阿蘇-4火砕流初期の小谷火砕流堆積物の比較を重点的にし,両者が異なる分化トレンドを取り,別々のマグマ溜まりにおいて結晶分化作用を起こしたことを明らかにできた.
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Strategy for Future Research Activity |
高遊原溶岩の代表的な試料について研磨薄片を作り,熊本大学理学部地球環境科学講座のSEM-EDS(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置)および熊本大学工学部附属工学研究機器センターの電子線マイクロアナライザ(島津製作所 EPMA-1720H)で,重点的に鉱物分析を行う予定である.鉱物組成分析の目的は(1)斑晶鉱物の平衡関係から異なるマグマの存在を読み取ること,(2)平衡に存在する鉱物ペア(斜方輝石ー単斜輝石,磁鉄鉱ーチタン鉄鉱など)から温度,酸素フュガシテリーの推定をすること,(3)斑晶鉱物の累帯構造からマグマ溜まりの物理化学条件が変化してから噴火までの時間変化を読み取ること,(4)斑晶鉱物に取り込まれているメルト包有物から初期に存在したマグマの組成を読み取ることである.また引き続き(5)全岩分析で得られた火山岩試料の分析値の組成変化の幅について,その変化幅を作ったメカニズムを検討する. 巨大カルデラ噴火の前駆現象を岩石学的にとらえる研究は数少ないが,海外で報告例が見られるようになった.それらの研究との比較検討は本研究の重要な部分である.また東日本大震災後,原子力発電所の再稼働の検討をする際に,巨大カルデラ噴火の長期予測を検討することは重要なテーマとなっている.これらの状況を把握しながら,研究を続けていく考えである.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Lateral magma intrusion from accumulated caldera-forming magma chamber: Constraints from geochronology and geochemistry of volcanic products from lateral cones around Aso caldera, SW Japan2013
Author(s)
Miyoshi M., Shinmura T., Sumino H., Sano T., Miyabuchi Y., Mori Y., Furukawa K., Uno K., Hasenaka T., Nagao K., Arakawa Y. and Yamamoto J.
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Journal Title
Chemical Geology
Volume: 352
Pages: 202-210
DOI
Peer Reviewed
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