2014 Fiscal Year Research-status Report
プラズモン光電場の極限空間操作によるナノケミストリー
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25410003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片野 諭 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (00373291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 金属ナノ微粒子 / 局在表面プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、粒径数ナノメートルの銀ナノ微粒子近傍に発生するプラズモン光電場を高い空間分解能で明らかにし、これまでにない光化学反応を強光電場に閉じこめられた単一分子の系で実現することである。ひとつひとつの銀ナノ微粒子を任意の場所に形成させて精密に配置する方法を開発し、従来にはないテーラーメイドによるプラズモン共鳴構造の作製を目指して研究を展開する。 平成26年度においては、実験実施計画書に記載した通り、STM探針で作製された単一銀ナノ微粒子の大きさ及び形状の制御を試みた。サンプルバイアスが負の領域で印加電圧の絶対値を大きくすると、探針直下に形成される微粒子のサイズが大きくなることを見いだした。さらに、STM探針で形成された銀ナノ微粒子に正の電圧パルスを印加すると、銀ナノ微粒子が探針側に引き延ばされた形状に変化することがわかった。このような形状変化は4 V以上の電圧を印加すると観察され、さらに高い電圧を印加すると銀ナノ微粒子が基板表面から消失した。ここで観測された銀ナノ微粒子の形状変化、および消失は銀ナノ微粒子の電界蒸発により誘起されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、STM探針で作製した銀ナノ微粒子の形状制御を目標として研究を行った。銀ナノ微粒子にSTM探針から電圧印加することにより、狙った銀ナノ微粒子のみにナノスケールで精度よく形状変化を誘起させることができた。この研究成果は、プラズモン光電場をナノ空間でコントロールできる可能性を示しており、おおむね順調に研究が進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでおおむね順調に研究が進んでおり、平成27年度においても実験実施計画書に記載した研究テーマに沿って実験を行う予定である。一般に、非占有軌道の高振動準位レベルに遷移した電子は、Kasha則に従ってその励起分子軌道の振動基底準位まで緩和後、エネルギーの低い分子軌道に遷移して余剰エネルギーを失う。しかしながら、分子軌道間の電子遷移に外部から強い光が共鳴すると、励起分子軌道における高振動励起状態からの電子緩和を実現することができる。ナノ微粒子間に発生するプラズモン光電場は、ギャップに閉じ込められた一種のコヒーレントな光源として機能することが期待される。分子の高振動励起状態を銀ナノ微粒子から発生するプラズモン光電場で制御し、ナノキャビティにおかれた分子の強光電場ダイナミクス、光反応の実現およびそれらメカニズムを理解することをめざす。
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Causes of Carryover |
おおむね予定通りの支出であったが、購入物品のなかで当初の見積りより安価に抑えられたものがあったため繰越金がわずかに生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に生じた繰越金と来年度に請求する研究費を、超高真空装置の維持に関わる真空部品と化学薬品の購入費、および研究成果を学会で発表するために必要な国内・国外旅費、学会参加費、論文投稿費などの使用にあてる予定である。
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