2013 Fiscal Year Research-status Report
液相水素結合系のテラヘルツ波応答における電子と分子運動の協奏的効果の解析
Project/Area Number |
25410008
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥居 肇 静岡大学, 教育学部, 教授 (80242098)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水素結合 / テラヘルツ / 強度 / 協奏的効果 / 理論 |
Research Abstract |
分光シグナルを解析するための理論的基盤,特に強度生成メカニズムに関わる理論的基盤の構築は,テラヘルツ分光において特に重要性が高い。本研究では,対象系を「水の純液体」から広げて多くの興味深い液相水素結合系を対象とし,テラヘルツスペクトルの強度生成に関わる「電子と分子運動の協奏的効果」を理論的に解析する。 平成25年度には,まず,水素結合の欠陥・動的揺らぎの効果について,分子運動による電子密度変化の解析と,そのエッセンスを組み込んだMDベースのシミュレーションを行った。水28および30分子(84および90原子)から成るクラスターを対象として,分子運動による電子のポピュレーションの変化を,基底関数重なり誤差に注意しながら解析することにより,水素結合方向の分子並進に関わる分子部分電荷の微分を求め,水素結合長に対する依存性を解析した。この効果と,分子間静電相互作用による分極の効果を取り入れながら,古典MDをベースにスペクトルを計算できる手法を考案し,実際に計算を実施することにより,スペクトル上において水素結合の欠陥・動的揺らぎの効果がどのように現れるのかを,明らかにした。さらに,(当初の計画には無かったが)スペクトルの温度依存性と,古典MDに用いるポテンシャル関数への依存性の起源も,明らかにした。 さらに,ペプチドと水から成る相互作用系について,分子クラスターを対象とした計算も実施した。相互作用に与る分子の相対的配置により,分子並進に関わる双極子微分が大きく変化することが,明らかとなっている。その起源の詳細の解析は,平成26年度に継続して行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募時に提示した3つの主題のうちの1つ「水素結合の欠陥・動的揺らぎの効果」について,分子クラスターを対象とした計算から分子運動に伴う電子の振舞いのエッセンスを抽出することと,それを組み込んだMDベースのシミュレーションを実施することを完了した。当初の計画には無かった「スペクトルの温度依存性」「古典MDに用いるポテンシャル関数への依存性」についても,起源を明らかにした。全体で3年計画であることから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,主として「蛋白質水溶液の溶媒由来バンドの強度増減の2次構造依存性」「電解質溶液系やイオン液体のテラヘルツスペクトルの強度と形状」の2つの主題について,解析を進める。現在予定している進め方は,応募時に記したとおりである。また,これらに関連して,有機酸が関わる水素結合系についても,テラヘルツ領域の赤外強度に興味深い特徴が見られることが,最近分かってきているため,これを含めた総合的な解析を進めることとする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算サーバに関わる消耗品の一部について,想定より少々長持ちしたものがあったため,わずかな次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額は,最初の1ヶ月で,予定していた物品の購入のために使用する見込みである。
|