2015 Fiscal Year Annual Research Report
光電子角度分布に対する、電子相関の影響の理論的解明
Project/Area Number |
25410010
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
鈴木 喜一 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10415200)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光電子角度分布 / LFPAD / 円二色性 / 電子相関 / 軌道対称性 / 縮重電子状態 / 光電子分光 / 多光子イオン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子相関の影響(複数の電子配置間での干渉効果を含む)を光電子角度分布上で確認する、実験手法を検討してきた。光電子角度分布は、固定された分子およびランダムな整列状態の分子両方で観測可能である。ただし、後者の方が実験が容易であり、実現可能性が高い。昨年度は、円偏光を併用すれば、整列していない分子に関しても、光電子角度分布に電子相関の影響を確認できることを示した。一方で、円偏光を併用した場合は、系の円筒対称性を崩すような偏光の組み合わせにすることが、意味のある情報を得るためには必要である。そのような、実験例は少なく理論研究例も限られている。 そこで、本年度はこの励起過程のメカニズムと、別の課題への応用を検討した。そのためにまず、円偏光励起のメリットがどこに由来するのかを検討した。その結果、ハイブリッド遷移(複数の回転主軸に遷移モーメントの成分がある遷移)を利用した分子整列状態を作ることで、電子相関の影響が見えやすくなっていることが判明した。ハイブリッド遷移の利用というのは、キラルな分子の観測における廣田の方法と同様である。廣田の方法ではマイクロ波分光を利用しているが、ここでは光電子分光を利用してキラルな分子の観測が可能かどうか検討した。キラルな分子の観測は、一般的には円二色性を測定するが、感度を上げて気相への応用可能性が近年複数のグループで検討されている。今回の研究では、キラルな分子を一つ選び、光電子角度分布の異方性パラメータを多重散乱法で計算した。計算の結果、たしかに円偏光を使った2光子過程の光電子角度分布を測定すれば、キラルな分子を区別できることがわかった。さらに、ハイブリッド遷移を使わない、直線偏光励起および円偏光イオン化過程に比べ、ハイブリッド遷移を使う円偏光励起の方が、感度が良いことを示唆する結果が得られた。これらの結果をまとめて、学会発表を行った。
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Research Products
(2 results)