2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子性液体の統計力学と量子化学に立脚した溶液内化学過程の究理
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25410011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 教授 (70290905)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 理論化学 / 量子化学 / 統計力学 / RISM |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、我々がこれまでに開発・拡張を行ってきた量子化学理論と液体の統計力学理論を基軸に、反応、光現象、輸送過程などを対象として、溶媒和による電子状態の変化やそれによって引き起こされる過程の詳細を分子レベルで解析してきた。またこの結果を踏まえながら、三次元溶媒和構造を計算する統計力学理論を、溶液内分子のダイナミックス理論へと拡充することを企図してきた。これまでの取り組みを通じて、水中のアニリンのイオン化に伴う電子状態変化、メロシアニン色素分子のソルバトクロミズム、イオン液体となるフェロセン類縁体分子の溶媒和構造など様々な現象を明らかにしてきた。さらに、溶液内の分子の構造揺らぎ理論、MC-MOZ-SCF法や3D-SSSV法など種々の分子理論の開発にも成功してきた。本年度の主な進捗は以下の通りまとめられる。 (1)多原子分子からなる液体中での拡散律速反応を記述できる新しい統計力学理論の開発に成功した。新しい方程式から得られた結果は分子動力学計算から得られた結果ともよく一致し、その有用性が示された。 (2)タンパク質PYPやGFPの色素分子を対象として、RISM-SCF-SEDD法に基づいたTDDFT計算を行い、溶液中の色素分子のプロトン化状態の変化に伴うソルバトクロミズムや溶媒和構造を調べた。 (3)pH変化に伴うフェノールフタレインの電子状態変化と溶媒和の影響についてRISM-SCF-SEDD法に基づき調べた。特に構造変化の寄与と水和に伴う安定化についてエネルギー面に基づいて明らかにした。 (4)経路積分法を用いた量子力学手法(Ring Polymer MD)についての研究を進め、プロトン移動反応などの計算を行った。 いずれの成果についても国内外の学会において発表するとともに、(1)と(2)については既に学術論文としてとりまとめ公表している。
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Research Products
(13 results)