2015 Fiscal Year Research-status Report
弱く結合する分子間錯体の集合状態を知る磁気プローブの確立
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25410013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 立久 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (80175702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ESR測定 / 多孔性結晶 / ラジカル / 単結晶解析 / 窒素プラズマ照射 / 異種原子内包フラーレン / 基底三重項状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までに、分子錯体の究極の姿としてホスト単結晶中にトラップされたゲストラジカル分子を作製して、X-線結晶回折像と電子スピン共鳴(ESR)スペクトルの同時測定を行った。実際には、配位子 2, 4, 6-tri(4-pyridyl)-1, 3, 5-triazine (TPT)分子 に金属イオン・亜鉛イオンを加えて、空孔が配列した金属錯体ホスト単結晶を作製し、これに2-phenyl-4, 4, 5, 5-tetramethyl imidazoline-3-oxide-1-oxyl (PTIO) をゲストとして吸収させた、吸蔵単結晶の合成に成功した。その単結晶について単結晶X-線回折測定に加えてESR測定を実行して、分子が配向したX-線回折像と単結晶ESRスペクトルを得た。現在、得られたX-線回折像と単結晶ESRスペクトルの相関関係を解析し、PTIOラジカル分子の正確な電子状態を明らかにした論文を執筆中である。 また、京都大学化学研究所・村田研究室との共同研究として進めている、He@C60とH2@C60分子に関する測定に加えて、新たにO2@openC60分子が研究対象となった。この内包フラーレンは、基底三重項状態の酸素分子を安定にフラーレンに内包する分子であり、気体状態でしか測定できない基底三重項状態を、パウダー状態や溶液状態、または凍結溶液状態で極低温測定を可能にする。極低温測定を行った結果、パウダー状態と凍結溶液状態で酸素の基底三重項状態が保存されている明瞭なESRスペクトルの測定に成功した。現在、1.5K~40Kにわたる極低温測定により、酸素の基底三重項状態に対するフラーレン分子の相互作用の測定・解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の欄に記述したように、平成27年度までに、ホスト単結晶中にトラップされたゲストラジカル分子のX-線結晶回折と電子スピン共鳴(ESR)の同時測定、He@C60とH2@C60分子への窒素プラズマ照射により得られた窒素原子内包フラーレンのESR測定を行ってきたが、その解析が進行中である。また、新たに基底三重項状態の酸素分子を安定に内包するO2@openC60フラーレンが研究対象に加わった。よって、おおむね順調に研究は進展いるが、あと一年の延長研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
ホスト単結晶中にトラップされたゲストラジカル分子のX-線結晶回折と電子スピン共鳴(ESR)の同時測定に関しては、単結晶ESRスペクトルの角度依存性が、X-線結晶回折像で得られたゲストラジカル分子の配向性と一致するか確認中である。正確な配向性の相関関係が決定できれば、ESRパラメータを決定しているラジカル分子の電子状態情報が実験事実として得られる。 He@C60とH2@C60分子への窒素プラズマ照射により得られた窒素原子内包フラーレンのESR測定に関しては、得られたESRスペクトルをコンピュータシミュレーションで再現することを進めている。 基底三重項状態の酸素分子を安定に内包するO2@openC60フラーレンについては、凍結溶液中の基底三重項状態が示しているゼロ磁場分裂定数の値の起源を探索する。起源が、磁気双極子相互作用かスピン・軌道相互作用かを決定するための測定データを収集して、結論を出す。
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Causes of Carryover |
研究進捗状況報告にも記述したとおり、ゲスト包摂単結晶試料の角度依存ESRスペクトルとX-線単結晶回折データ結果の相互関係の解析、He@C60とH2@C60への窒素プラズマ照射で得られたESRスペクトルのコンピュータシミュレーション解析、新たに加わった、O2@openC60分子の基底三重項状態の解析、これらの解析が1年の内に終わる見通しである。そこで、1年間の延長研究を進めるために、次年度に必要額の研究費を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延長研究のため、施設利用(主に自然科学研究機構・分子科学研究所にて)のための出張旅費、試薬購入費、ソフトウェア購入費に充てる。
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[Journal Article] Hiding and Recovering Electrons in a Dimetallic Endohedral Fullerene: Air-Stable Products from Radical Additions2015
Author(s)
Michio Yamada, Hiroki Kurihara, Mitsuki Suzuki, Masatoshi Saito, Zdenek Slanina, Filip Uhlik, Toshihiko Aizawa, Tatsuhisa Kato, Marilyn M. Olmstead, Alan L. Balch, Yutaka Made, Shigeru Nahase, Fing Lu, Takeshi Akasaka
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 137
Pages: 232-238
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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