2014 Fiscal Year Research-status Report
最先端・次世代半導体デバイス実用化のためのハイドープSi表面の表面科学的研究
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25410015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 健俊 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (20390643)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シリコン / 硝酸酸化 / 表面パッシベーション / ハイドープ / キャリアライフタイム / 界面準位密度 / 固定電荷 / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
実際に用いる結晶型シリコン太陽電池ウェハのシリコン界面の特性の評価を行った。太陽電池に用いるテクスチャー基板を用いて、リン(P)をハイドープしたp型シリコン基板およびリンおよびボロン(B)をハイドープしたn型シリコン基板表面に硝酸酸化膜を形成し、Si/SiO2界面特性の評価を行った。保護膜には、ポスト熱酸化膜を用いた。また、その後に、Si/SiO2界面の欠陥であるSiダングリングボンドを消滅させるために水素中アニールを行った。p+ Si/n Si/ p+ Si、n+ Si/n Si/ n+ Siおよびn+ Si/p Si/ n+ Si構造に対し、硝酸酸化を行うことによりSi/SiO2界面特性が大きく改善され、ポスト熱酸化を行っても、硝酸酸化膜が有る方が少数キャリアライフタイムは、5~70%向上した。これは、硝酸酸化膜のSi/SiO2界面の良好な特性が、ポスト熱酸化後でも維持され、界面準位密度の低減に極めて効果的であることも分かった。特に、ボロン(B)をハイドープしたn型シリコン基板表面では、少数キャリアライフタイムの向上が著しかった。これは、太陽電池特性を劣化させることが知られているボロンリッチ層がシリコン表面にでき硝酸酸化により効果的に除去されることが示唆された。 また、p型Si基板上で硝酸酸化したものとそうでないものを、熱酸化後、水素処理をし、表面にAlドット電極、裏面に全面Al電極を形成し、コンダクタンス―電圧曲線を測定し、Si/SiO2界面での界面準位密度を評価した。これにより、界面準位密度が10%以上も低減することが分かった。また、電気容量―電圧特性から固定電荷密度も求めたが、硝酸酸化膜の有無で明瞭な変化は見られなかった。昨年度の結果も併せて考えると、硝酸酸化膜は、p型およびn型の両シリコン基板表面のパッシベーションに非常に有効であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面に実際の太陽電池に用いるテクスチャー構造とハイドープ層のある太陽電池基板上での硝酸酸化処理の最適条件の探索に成功し、パッシベーション効果を実証し、また、新たにボロンリッチ層の除去に硝酸酸化を用いる研究課題を見出しており、太陽電池に用いるハイドープ層のパッシベーションの研究は、予定より大きく進んだ。 研究室内のXPSが故障したため、ハイドープ基板上の酸化膜の組成や膜厚の評価がまだであるが、XPS測定を行える施設を見つけたので、早期に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ボロンリッチ層の除去を行う硝酸酸化法の最適条件を探索する。XPSを用いて、硝酸酸化処理前後でのシリコン表面の組成を明らかにする。また、SiN保護膜を形成した際のSi/SiO2界面特性の評価をμ-PCD法により測定した少数キャリアライフタイムにより行う。さらに、気相拡散法を用いたボロンハイドープ基板の作製が完了したので、これを用いて、拡散法の違いによるハイドープ層の特性の比較と、硝酸酸化による表面パッシベーションと表面エッチング方法の研究・開発を行う。また、一般的に太陽電池プロセスで用いられているAl電極により形成したハイドープ層との物性の比較を行う。STMによる表面形状観察やSTSによる表面電子状態の評価も進める。 ハイドープシリコン表面の水蒸気との反応の観察とメカニズム解明を行う。相対湿度80%/80˚Cの加湿高温加速試験機で、ハイドープシリコン表面と水蒸気を反応させる際に、硝酸酸化膜がシリコン表面の有無による、シリコン表面の構造、組成、電子状態、酸化膜厚などの違いをXPS、TEM、STMおよびSTSなどにより明らかにする。これにより、恒久保存メモリ「デジタルロゼッタストーン」のためのハイドープシリコン配線の有用性や硝酸酸化膜による長寿命化について検証を行う。
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Causes of Carryover |
太陽電池および恒久保存メモリの保護膜となるSiN膜の形成が、研究協力者の社内の方針変更により、難しくなったため、消耗品費を減らし、その外注資金としたから。また、新たな成膜場所の候補を最終選定中であるから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SiN膜の形成費用とする予定である。
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Research Products
(4 results)