2015 Fiscal Year Annual Research Report
水和数の精密制御による小さなタンパク質の折れ畳みの観測:真の駆動力は何か
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25410022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
迫田 憲治 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80346767)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リボヌクレアーゼA / タンパク質 / 折り畳み |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質が機能を発現するには,適切な構造に折れ畳む必要がある.近年,タンパク質と直接には相互作用していない,遠方にある水分子の並進運動(並進エントロピー)や,それに伴う水分子ネットワーク構造の組み替えが,タンパク質の効率的な折れ畳みを駆動している可能性が指摘されている.天然状態のタンパク質は溶液中でコンパクトな立体構造をとるが,この立体構造が崩壊するときの自由エネルギー変化は比較的小さい.そのため,加熱や他の溶存物質との相互作用によって容易に変性しやすく,このとき,タンパク質がもっていた生化学的な機能は失われる.そのため,タンパク質の微妙な構造安定性を理解するためには,周囲に存在する水の役割を無視することは出来ない.本年度は,球状タンパク質の1つであるリボヌクレアーゼAの電子スペクトルを測定することによって,水や添加化合物がリボヌクレアーゼAの安定性に与える効果に関して研究を行った. リボヌクレアーゼAの側鎖芳香環の吸収に由来する280nm付近の吸収バンドをモニターしながら温度を変化させると,65℃付近で吸収強度に大きな変化が観測された.これはリボヌクレアーゼAの変性に伴う変化である.一方,実際の細胞中の環境を模倣する目的で中性高分子であるポリエチレングリコールを高濃度に添加した.以前からポリエチレングリコールのような巨大混み合い分子を添加するとタンパク質の安定性が上昇することが報告されていたが,本実験ではリボヌクレアーゼAの融解温度に大きな変化が観測されなかった.一方,溶液中に電解質を添加した系では,リボヌクレアーゼAの融解温度に大きな変化が観測された.これは,電解質イオンの添加によって水分子ネットワークの構造が変化したことが原因であると考えている.
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Research Products
(19 results)