2013 Fiscal Year Research-status Report
気相水和クラスターを用いた核酸塩基水和構造のモデリング:ヌクレオチドへの展開
Project/Area Number |
25410023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
三枝 洋之 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (90162180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 眞幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (10362295)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 核酸塩基 / 水和構造 / 赤外スペクトル / ヌクレオチド / 塩基対生成 / レーザー脱離 |
Research Abstract |
DNAやRNAの結晶構造解析の結果、これらの内部には特定の構造を持った水和殻が存在することが明らかになりつつある。しかしこの第一水和圏を構成する水分子が、分子認識機能にどのような役割を果たしているかを結晶構造から知ることは難しい。そこで本研究では、核酸塩基の水和構造と機能発現との関連をモデリングすることを目的として、これら核酸塩基の気相水和クラスターの構造解析を行った。具体的には、実際のDNAやRNAの構成単位である糖‐リン酸基バックボーンが結合したヌクレオチドの微細水和構造を検討した。特に、ヌクレオチドとそのデオキシ体の水和構造の違い、2つの塩基が糖‐リン酸基により結合したジヌクレオチドにおける塩基対構造(水素結合型構造とスタッキング型構造)と水和の関連性を検討した。 またこれまでの赤外レーザーの掃引可能な波数領域は2000 cm-1以上に限られていたため、塩基や糖のOH/NH/CH伸縮と水のOH伸縮など高波数側の振動スペクトルにより構造決定を行ってきた。しかし、糖-リン酸基バックボーンを含むヌクレオチドの高次構造を決定するためには、それらの骨格振動を含む指紋領域(1000-2000 cm-1)への展開が重要となる。そこで本研究では、中赤外領域でレーザー発振が可能な非線形結晶を導入した。その結果、尿酸分子の中赤外領域の赤外スペクトルを測定することに成功した。同様にして、現在尿酸水和物、ヌクレオチド、ジヌクレオチドの赤外スペクトルの測定を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究者(塚本眞幸)が合成した種々のヌクレオチド、ジヌクレオチドの質量スペクトルを測定し、現在赤外スペクトル測定を行っている段階である。 レーザー脱離法を用いてグアニンジヌクレオド(c-GMP)を非破壊的に気化することに初めて成功した。 赤外レーザー分光法を中赤外領域へと拡張し、すでに核酸塩基分子の赤外スペクトルを測定している。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者の合成した多くのジヌクレオチドには、レーザー脱離法を用いて気化しようと分解してしまうものが多い。そこでこれらの分子が分解しないような置換基の導入を検討している。共同研究者が中心となってこれらの化学修飾を行う予定である。 赤外レーザー分光法を中赤外領域へと拡張する際の問題は、この領域には空気中の水分による強い吸収が存在するため、赤外レーザー光は殆ど吸収される。これを克服するために窒素ガスを用いたパージシステムの作成を行う必要がある。
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