2014 Fiscal Year Research-status Report
気相水和クラスターを用いた核酸塩基水和構造のモデリング:ヌクレオチドへの展開
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25410023
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
三枝 洋之 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (90162180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 眞幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (10362295)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水和クラスター / 中赤外レーザー分光 / レーザー脱離 / ペプチド / 核酸塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
重要な生体分子の一つである尿酸についてその微細水和構造をモデル化することを目的として、尿酸の水和クラスターをレーザー脱離法を用いて気相孤立化し、中赤外レーザー分光により構造決定を行った。中赤外レーザー光設備は昨年度の本研究により既に整備していたが、種々の技術的な改良を加えることにより得られるスペクトルの質が飛躍的に向上し、質量選別した水和クラスターの中赤外スペクトルを測定することに成功した。レーザー脱離法と中赤外レーザー分光法を組み合わせて、生体分子の構造決定を行った初めての例と思われる。尿酸には3つのCO伸縮振動があるが、その振動数の違いが水和による振動数の低下と同程度であるために、2つ以上伸縮振動が混じり合うという興味ある現象を見出した。一方、近赤外領域におけるNH伸縮振動の場合は、水和による振動数低下が大きいためこのような効果は観測されない。このような水和構造による分子振動数の違いを利用して、中赤外レーザー光により構造異性体を分離することが可能であることを明らかにした。また同様に尿酸とメラミンの錯体についても、中赤外分光を用いて構造決定を行った。メラミンという分子は生体には存在しないが、これが混入した粉ミルクを摂取した乳幼児の尿道や膀胱に結石が形成するのは、メラミンが尿酸と錯体を形成することが原因とされている。結石の化学分析の結果、結石の核となるのは尿酸とメラミンの1:1錯体であると推測されてきたが、本研究により、1:1錯体の構造は従来提案されたものと大きく異なる特異的な構造であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
波長可変の中赤外レーザー光を発振させる技術の向上を試みたことで、従来の2倍以上の出力が定常的に得られるようになった。これを用いて赤外スペクトルを測定した結果、スペクトルの分解能が飛躍的に改善された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは核酸塩基分子の一つである尿酸の水和構造、メラミンとの錯体の構造の決定を行ったが、今後は核酸塩基に糖やリン酸基が置換したヌクレオシドやヌクレオチドへと拡張し、これらの水和構造を検討する予定である。これらのヌクレオシドやヌクレオチドはレーザー脱離法を用いて気化しても殆ど分解してしまうことが知られている。我々は既に共同研究者(名古屋大学塚本眞樹博士)との研究により、これ等の核酸塩基構造の一部を化学修飾することで非破壊的に気化できることをで明らかにした。本研究でも、これを共同研究者が担当する予定である。
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Causes of Carryover |
13円のため次年度に繰り越す。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の助成金の一部として使用する予定である。
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