2013 Fiscal Year Research-status Report
再生利用可能な微小銅ナノコロイドの合成とその触媒への応用
Project/Area Number |
25410028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 銅ナノコロイド / 光還元法 / 触媒 / 再生 / 酸化チタンナノ粒子 / 担持 |
Research Abstract |
金ナノコロイドの代替として銅ナノコロイドの合成およびその触媒への応用が期待されている。しかし、その合成には通常強力ではあるが有害な還元剤を用いなければならず容易ではなく、またこうして得られたコロイドが酸化されやすいため触媒への応用も困難であった。そこで本研究では、明示的な還元剤を一切使用しない光還元法を用いた新しい銅ナノコロイドの合成法確立ならびにその触媒への応用を目指した。 平成25年度は、銅ナノコロイドの安定的な合成法確立を目指した。既に行っていたPVPを混合した溶液に対する光還元反応による合成では、大気暴露によって30分以下で消失してしまう扱いにくさがあった。そこで研究開始当初、安定な合成には、安定化するためのコロイド担持剤が有効であると考え、カーボンナノチューブ上への担持体合成を試みた。実際、非常に安定なコロイドを得ることに成功した。しかしその一方で、安定化されすぎたためか、PVP光還元法によるものではみられたコロイドの再生化はできなかった。そこで、光触媒としても有用である酸化チタンナノ粒子への担持に切り替えて行って再検討した。 実際こうして得られたコロイド溶液の吸収スペクトルからは、銅ナノコロイドに特有のプラズモン吸収が顕著に観測された。また大気暴露による分解反応も試みたところ、分解するもののその速度は半減期にして5倍以上であったことから、ある程度の安定性を得たことがわかった。さらにこうして分解された溶液からのコロイドの再生化もできることがわかった。こうした研究成果については学会発表2件、論文発表2件(1件は受理済み、1件は投稿準備中)を行った。また触媒反応への応用についても研究を開始した。具体的には、ベンズアルデヒドの酸化還元反応への応用の検討を行った。実際、反応によって得られた溶液の吸収スペクトルを測定したところ、還元反応が進行することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、触媒反応に応用するためには不可欠な、合成の高濃度化に主として取り組んだ。いくつか試みた中でも、特に酸化チタンナノ粒子に担持させながら合成する方法によって、単に高濃度にコロイドが得られるだけでなく、その分解速度を、制御しやすい時間域まで引き延ばす効果が確認できた。その一方で、コロイドの再生化の能力も保持できることがわかった。こうした成果については、学会発表、論文発表(準備中)を行った。また、こうして得たコロイドの触媒反応への応用についても、ベンズアルデヒドを用いた検討を開始した。手始めに、参照物質を用いた吸収分光法を用いた反応追跡から行っているが、実際に触媒反応の追跡が行えることを確認できた。これまでのところは、コロイド合成と触媒への応用の両面から順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
銅ナノコロイドの合成法確立については、引き続き反応条件の絞り込みを行う。これまでの検討から合成法として有望である、PVP混合による光還元反応による方法、および新たに見いだした酸化チタンナノ粒子への担持による方法の両面から検討を進める。また、これまでは電子顕微鏡によってその存在が確認できるために研究しやすい10 nm近傍のナノコロイドを中心に扱ったが、これらの方法では粒子存在を確認できない推定粒径1 nm以下のクラスター状態で存在すると考えられる、遷移状態にある合成溶液についても、当初計画通り外挿法などを駆使して検討を行う。また、触媒反応への応用については、吸収分光法だけでなく、GC-MSも併用した、生成分子の同定まで含めた観測法の確立まで行う。 これらの研究には、ナノコロイド合成に1名、構造分析に1名、触媒反応探索に1名の学生とともに実施予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、既往の成果を元にした方法によってナノコロイド合成を行う予定でいた。この方法は、合成濃度が低いために触媒反応に有効な量を得るためには、同時並行に大量に合成をする必要があるため、反応条件を最適化した後に、それに対応できる合成設備を整備するためにUVランプ光源を購入する必要があった。しかし、酸化チタンナノ粒子を用いた新しい合成法を見いだしたことによって、最適化すべき対象が変わったことから、平成25年度に見切りでUVランプ光源を購入するよりは、十分に合成条件を検討して平成26年度に合成設備を見直す方が有効に研究資金を活用できると判断したため、次年度使用することとした。 現在、別に所持している低照度の他波長光源によって、どの条件下で最も効率よく有効なナノコロイドが合成できるか検討している段階である。具体的には平成26年度の前半までに見通しを立てる予定である。これによる最適化の見通しが立った際には、それに見合った合成設備を整備予定である。
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