2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25410031
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
黒野 暢仁 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (10333329)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不斉合成 / Strecker型反応 / リチウム化合物 / ルテニウム錯体 / 触媒 / オキソアンモニウム塩 / 酸化的カップリング / 酸素酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学活性ジホスフィンとアミノ酸を配位子とするルテニウム錯体と単純なリチウム塩が非結合的な相互作用により形成した「不斉リチウム塩触媒」を用いて、ケチミン類の不斉ストレッカー型反応の開発を継続している。本年度は、基質である窒素原子にCbz基などを導入したケチミン類の入手方法を中心に検討を行った。アルジミン類と比較すると、エナミン形成などのためにケチミン類を簡便に入手することは困難であり、また既存の手法は反応条件が煩雑であり、効率的な原料の入手には不向きである。 これまで本課題で用いている「不斉リチウム塩触媒」は、窒素原子にCbz基を導入したアルジミン類および一部のケチミン類への不斉シアノ化反応に高い触媒活性を示している。これらのケチミン類は、調製した酸化剤を用いて極低温条件下、カーバメート類を酸化して入手している。この工程を別法に置き換えてケチミン類の入手が簡便すれば、当初の研究目的を満たすとともに、原料の調達を含めた効率化に結実するものと考えた。そこで「酸素の酸化力を駆動力とする手法」に着目して、検討した。 最初に取り扱う基質としては、窒素原子にCbz基を導入した1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(N-Cbz-THIQ)を基質とした。基礎的な知見を収集するために、既知の反応である1,3,5-トリメトキシベンゼンを求核剤とした酸化的カップリング反応をモデル反応として選定した。酸化反応が進行した場合には反応性の高いイミニウム塩が生成し、求核剤が反応することを期待した。初期の実験の結果、オキソアンモニウム塩を直接的な酸化剤として用い、相当する還元体(ヒドロキシアンモニウム塩)を酸素により再酸化する手法に期待できることが分かった。次に、オキソアンモニウム塩の触媒化を行うために各種条件検索を行った。その結果、カウンターアニオンに大きく影響を受けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
様々な環状イミン類への不斉シアノ化の検討を計画していたが、既存の方法では、副生成物のエナミンと量論量発生する酸化剤由来の化合物の除去が必須である。さらに酸化剤は高価であり、基質のグラムスケールの合成を行うために酸化剤の大量合成も必要であった。検討の結果、中程度であるが酸化剤は入手できた。しかしながら、基質とするイミン類の入手には至らなかった。 代替手法として着目した「酸素の酸化力を駆動力とする手法」においては、酸化反応をモニターする上で、アルコキシベンゼン類とのカップリング反応を試みた。その結果、オキソアンモニウム塩による触媒活性を発見したが、所属機関が変わり、実験環境の変化や整備に伴い、当初の計画より遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に遅れが生じたために、本課題の研究期間を28年度まで延長した。 今後の研究推進について、実験環境の変化に伴い通常使用できる核磁気共鳴装置の分解能の低さなどの問題については、使用する重溶媒や測定温度などの測定条件を変更させることにより打開する。 本年度までにイソキノリン誘導体を基質とした酸化的カップリング反応においてオキソアンモニウム塩が触媒活性を持つことは解明したので、28年度前半は、同様のカップリング反応に適用できるカーバメート類を明らかにして、シアノ化反応への適用を検討する。後半に、不斉リチウム塩を用いた反応に展開したい。この酸化的カップリング反応は、現段階ではアセトニトリル溶媒が最適溶媒であるが、その他の汎用性の高い溶媒を使用した場合にも進行することを明らかにしている。 また、シアノ化反応においては、シアン化トリメチルシランとメタノールを反応させることにより、シアノ源であるシアン化水素を系中で発生させている。このシアン化水素の発生において、基質カーバメート類の酸化後に生成するヒドロキシアンモニウム塩との反応により発生させることを計画している。この手法で全量のシアン化水素を発生させる場合には、必然的に量論量以上の酸化剤が用いられるが、酸化反応は速やかに進行することが期待できる。さらに、ヒドロキシアンモニウム塩は減圧留去などの簡便な操作で除去することはできないので、シアン化水素を発生させる化合物として利用できると同時に、不斉シアノ化反応の阻害が十分に考えられるヒドロキシアンモニウム塩のヒドロキシ基をトリメチルシリル基で保護することも併せて賦与できることを期待している。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究においてモデル実験と類似化合物を用いた条件検索に費やした。このことに伴い、物品費において消耗品などの支出を抑えることができたので次年度使用額が生じた。また、所属変更に伴い、学会の参加費用(交通費・滞在費など)で経費を節約できたことも理由の1つである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本課題は、合成実験を行うことから、薬品、溶媒、冷媒などに30万円使用し、残額は印刷費として使用する予定である。
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