2013 Fiscal Year Research-status Report
超分子組織化を指向した外周部縮環による新規拡張π共役系の創製
Project/Area Number |
25410033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石塚 智也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20435522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポルフィリン / π拡張キノン / 酸化還元 / 縮環反応 |
Research Abstract |
拡張した π共役系を有するキノン型分子は、プロトン共役電子移動による酸化還元反応と、可視光吸収などの光学特性を併せ持つ機能性色素として注目されている。 本年度は、新規π拡張キノン分子として、テトラフェニルポルフィリンの外周部に、ケト基で連結した4つの縮環構造を有するポルフィリン誘導体を合成した。合成は、原料として4つのメソ位フェニル基のオルト位にカルボキシ基を有するポルフィリンを用い、カルボキシ基を酸クロリドに変換した後、ルイス酸としてAlCl3を用いた分子内フリーデル・クラフツ反応によって行った。生成物のキャラクタリゼーションには、1H NMRおよびMALDI-TOF-MSスペクトルを用いた。1H NMRスペクトルでは、C4対称性に基づく5本のシグナルが現れ、β-ピロールのプロトンは、シングレットとしてδ 8.57 ppmに観測された。さらに興味深いことに、このケト縮環ポルフィリンをトリエチルアミンで処理すると、還元されてヒドロキノン型のポルフィリンへと変換できることが分かった。ヒドロキノン型のポルフィリンの1H NMRでは、分子の対称性が低下したことを反映して、10本のシグナルが観測された。 さらに、この酸化還元過程の可逆性と溶解性を向上させる目的で、ヒドロキノン型のポルフィリンを、亜鉛(II)イオンに配位させた。得られたヒドロキノン型の亜鉛(II)錯体を、酸化剤であるジクロロ-ジシアノ-ベンゾキノン(DDQ)で処理すると、キノン型の亜鉛(II)錯体に定量的変化した。このキノン型の亜鉛(II)錯体は、C4対称性を反映して、1H NMRスペクトルにおいて5本のシグナルを与えた。さらにキノン型の亜鉛(II)錯体に対して、デカメチルフェロセンを作用させると、元のヒドロキノン型の錯体に戻り、可逆性の良い酸化還元過程が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたケト縮環型のポルフィリンの合成に成功した。この反応では、縮環位置の異なる異性体の生成が予想されたが、縮環部位となるメソ位のフェニル基に導入したカルボキシ基の、ポルフィリン面に対する向きを一方向に揃えることで、異性体の生成を抑えることが可能となった。さらに当初の予想通り、このケト型縮環ポルフィリンは、プロトンと共役した可逆な酸化還元過程を示した。得られたケト型縮環ポルフィリンは、+0.11 V vs SCEに比較的可逆性の良い酸化還元波を示し、フラーレンなどの従来のアクセプター分子に比べて、非常に高い還元電位を示した。また平面性の高い構造を有すると考えられることから、今後、この分子を集積させた際に、高い機能性を発現することが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたケト型縮環ポルフィリンが、フラーレンを越える高い還元電位を示したことや、ほとんど可視領域全てを覆う光吸収を示したことを利用して色素増感太陽電池などへの応用を展開していきたい。 特に本年度に得られたケト型ポルフィリンと、水素結合ネットワークの形成が可能と考えられる、アミンで架橋された縮環構造を持つアザ型縮環ポルフィリンの合成に着手したい。アザ型縮環ポルフィリンの合成に関しては、ポルフィリン外周部にリンカーの元となるアミノ基を導入し、連続的な結合形成により縮環構造を構築する計画である。この分子の合成に成功すれば、ドナー、アクセプターが交互に並んで、二次元状に拡がった水素結合ネットワークを形成できると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
筑波大学では支払いベースで収支簿を計上しており、残額に関しても3月中に購入は済ませているが、支払いが4月になったため、残額が生じたものである 既に支出先が決まっている
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Research Products
(33 results)