2013 Fiscal Year Research-status Report
C70とアセンとのDiels-Alder反応を基盤とした分子技術
Project/Area Number |
25410041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田嶋 智之 岡山大学, その他の研究科, 講師 (90467275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フラーレン / アセン / ペンタセン / C60 / C70 |
Research Abstract |
本年度は、系統的にアセンとフラーレン類との反応について明らかにするため、まず、C60とペンタセンとのDiels-Alder反応を詳細に検討した。 ① C60とペンタセンとのDiels-Alder反応 我々が報告した位置特異的に中央の環で反応するペンタセン誘導体 (Chem. Lett. 2012)を用い、C60フラーレンとのDiels-Alder反応を行った。この反応では、きれいに反応が進行し、C60-ペンタセンmono付加体を75%の収率で得た。無置換のペンタセンとC60とのDiels-Alder反応では、ペンタセンに対し様々な配向で異なる数のC60が付加することが報告されているが、各種NMR、UV-Vis-NIR、およびMALDI-TOF-MSの測定により、得られた付加体の構造を詳細に検討したところ、位置特異的にペンタセン骨格の6,13位に1つのフラーレンが1,2-付加していた。得られたC60-ペンタセンmono付加体の構造は、最終的に単結晶X線構造解析で明らかにし、フラーレン部位が、隣接する分子の二つのナフタレン環の作る空間に包接されb軸方向にスタッキングしたカラム状の構造をとることが明らかとなった。 ② C60-ペンタセン誘導体の結晶状態におけるデバイス能の評価 有機薄膜太陽電池において、アクセプタ分子として機能するかを調べるため、poly(3-hexylthiophene) (P3HT) をドナー分子として用い、Bulk Hetero-junction型薄膜太陽電池を作製した。作製した太陽電池について、疑似太陽光 (AM 1.5) 照射下、Ar雰囲気下で太陽電池特性を測定したところ、光電流の発生が見られた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画の通りに、系統的にアセンとフラーレン類との反応について明らかにするため、まず、C60とペンタセンとのDiels-Alder反応を詳細に検討し、反応性や生成物の構造決定、分子配列などについて明らかにすることができた。平成26年度からは、計画の通りに、これらの成果をC70誘導体に展開し、C70誘導体を「簡便に作る」、「簡便につくりわける」「簡便に並べる」という分子技術の礎を築く分子構築するため、実験と理論の両面からのアプローチで、研究を遂行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られたC60とペンタセンとの反応および得られた付加体の結果や知見を礎に、研究対象をC70へと拡張し、C70とペンタセンとのDiels-Alder反応について着手する。 ① C70とペンタセンとのDiels-Alder反応 我々が報告した位置特異的に中央の環で反応するペンタセン誘導体 (Chem. Lett. 2012)を用い、C70フラーレンとのDiels-Alder反応を行い、異性体の生成率をBucky prepにより算出し、1H および13C NMR (付加体の対称性の違いにより、ペンタセン骨格の1H, および13C NMRのシグナルの数が異なる) にて異性体の同定を行う。また、理論と実験の両面から、異性体の作り分けるための検討を行う。(a) 逆Diels-Alder反応を検討する。(b) 反応温度の最適化を行う(既に理論計算では、青の付加位置の異性体の方が数kcal/mol安定であることを確認しており、逆Diels-Alder反応が起きれば、熱力学的支配の生成物を反応条件でつくりわけることができると考えている。)更に、単離した付加体のサイクリックボルタモグラムによる酸化還元電位の決定、吸収スペクトルなど、有機デバイスへ展開する上で重要な基礎的知見を実験的に明らかとする。万一、計画がうまく進行せず、反応条件により、単離ができなかった場合は、Bucky prepによる異性体の分離を行う。また、Diels-Alder反応は軌道間の相互作用が重要である。理論計算から、C70とペンタセン誘導体の軌道が相互作用できるエネルギー準位にあるという知見が得られているが、反応の進行がうまく行かなかった場合は、ペンタセン上の官能基を変更し、ペンタセンの準位を変えるなどの対策を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に比べ、予想していた以上に、目的物の収率が高く、化合物の生産性が高かったため、消耗品として申請していたC60(1g、52,000円)、ペンタセン誘導体の合成に必要な3,5-ビス(3,5-ジメトキシベンジルオキシ)ベンジルブロミド (5 g, \ 46,746, Nakarai)、アセチレンジカルボン酸ジメチル (100 g, , \ 28,310 alfa) など高価な試薬の購入量が少なくなった。また、物性の評価に関しては、不安定なペンタセンを単離することなく、1ポットで安定な前駆体から合成できるようになった点で、アルゴンがスなどの不活性ガスの使用量が少なくなった。さらに学部委託する予定であった依頼測定(元素分析や高分解能NMR)について、所属機関内での測定が可能となり、依頼測定料金の支出が当初に比べ、少なくなった。 今年度からは、C70の反応性に着手する予定である。C70の価格は (1 g, \ 74,025 Nakarai) 高く、研究を遂行する上で、多くの試薬を使う予定である。また、順調に研究が進行しているので、本計画を遂行するにあたり、薄膜状態での分子配列の解明についての特殊な依頼測定、FETやITO基板や溶液プロセスでの消耗品を購入し、実験計画よりも深いレベルでの物性検討について使用したいと考えている。
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