2014 Fiscal Year Research-status Report
C70とアセンとのDiels-Alder反応を基盤とした分子技術
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25410041
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田嶋 智之 岡山大学, その他の研究科, 講師 (90467275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | C70 / ペンタセン / Diels-Alder反応 / 分子配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、基礎化学的に重要で広く研究されていたアセンとC60のDiels-Alder反応に関して、その研究対象をC70フラーレンへと拡張し、これまで異性体の混合物として主に評価されていたC70誘導体を「簡便に作る」、「簡便につくりわける」「簡便に並べる」という分子技術の礎を築くことを目的とし、これまでに上記の3つの研究を主に展開した。ペンタセン誘導体 とC70 との反応を行ったところ、ペンタセン骨格の付加位置の異なる2つの異性体が生成比5:1 で得られ、1つの異性体 については、その単離に成功した。また、逆Diels-Alder反応が起きうることを実験的に確認し、反応温度の最適化を行い、熱力学的支配の生成物を反応温度でつくりわけることにも成功した。さらに熱力学的に安定な化合物がとれるという選択性は、理論計算の結果でも支持する結果が得られた。単離した異性体 についてはX 線構造解析に成功し、結晶中でユニークな分子配列をとることを明らかにした。単離した付加体のサイクリックボルタモグラムによる酸化還元電位の決定、吸収スペクトルなど、有機デバイスへ展開する上で重要な基礎的知見を実験的に明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、C70誘導体を「簡便に作る」、「簡便につくりわける」「簡便に並べる」という分子技術の礎を築く分子構築するため、実験と理論の両面からのアプローチで、以下の3つの研究を主に展開したが、 ① C60とペンタセンの反応性の解明および結晶状態における分子配列の解明 ② C70とペンタセンとのDiels-Alder反応とretro-Diels-Alder反応によるC70付加体の異性体の選択的合成法の確立 ③ C70結晶状態における分子配列の制御と有機デバイス(有機薄膜太陽電池、FET)との相関について の実施計画のうち、平成26年度までの実施計画予定の①、②までを計画の通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ペンタセン誘導体 とC70 との反応を行ったところ、ペンタセン骨格の付加位置の異なる2つの異性体が生成比5:1 で得られ、1つの異性体 についてはその単離に成功した。この反応はアセンとC70 との反応性を明らかにした初めての例である。単離した異性体 についてはX 線構造解析に成功し、結晶中でユニークな分子配列をとることを明らかにした。逆Diels-Alder反応が起きうることを実験的に確認し、反応温度の最適化を行い、熱力学的支配の生成物を反応条件でつくりわけるにも成功した。単離した付加体のサイクリックボルタモグラムによる酸化還元電位の決定、吸収スペクトルなど、有機デバイスへ展開する上で重要な基礎的知見を実験的に明らかとした。最終年度は、 C70結晶状態における分子配列の制御と有機デバイス(有機薄膜太陽電池、FET)との相関について検討をする。
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Causes of Carryover |
C70の反応性について着手したが、予想していた以上に目的物の収率が高く、消耗品として申請していたC70(1g \74,025 Nakarai), ペンタセンの原料である3,5-ビス(3,5-ジメトキシベンジルオキシ)ベンジルブロミド(5 g, \ 48,000)など、高価な消耗試薬の購入量が少なくなった。また、目的分子のつくり分けが可能になったために、精製に関して予想された溶媒の使用量も少なくなったので、申請額と使用額との間に差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、デバイス作製のために、目的化合物の大量合成を行う予定である。特殊な依頼測定、FTOやITO基板や溶液プロセスでの消耗品の購入を行い、当初の実験計画よりも深いレベルでの物性・応用検討について予算を費やし、申請時計画以上の成果につなげたいと考えている。また、過渡吸収スペクトルなどの特殊な依頼測定を行い、光励起状態の情報について、学術的に深いレベルでの物性評価を行い、C60誘導体との違いなどについて、系統的な性質を解明をしたい。
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