2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25410050
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
芝原 雅彦 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (60253762)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 渡環π電子相互作用 / シクロファン / 色素増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香環をメチレン鎖等で架橋したシクロファン(CP)は興味深い電子的性質を示す。芳香環がrigidに積層した多層[3.3]パラシクロファン(PCP)およびflexibleな構造を有する多層[3.3]メタシクロファン(MCP)は,スルースペース・スルーボンド両経由による効果的な渡環π電子相互作用を調べる上で最も適した化合物である。そこで,多層[3.3]PCPについては5層[3.3]PCPの合成を,多層[3.3]MCPについては7層以上を,また,積層系渡環π電子相互作用を効果的に利用可能な[3.3]CPをブリッジ(B)として組込んだドナー(D)・ブリッジ(B)・アクセプター(A)系の色素増感剤の合成について研究を進めることとした。 5層[3.3]PCPの合成は,3層ジブロモ体と2層EbsMICアダクトをカップリングし,加水分解することで5層ジオン体を得た。 7層[3.3]MCPについては,多段階合成では多くのカップリング反応を必要とし収率の観点から困難が予想されるため,中心部位のテトラブロモ体を鍵化合物とし,3層テトラエステル体の合成まで達成した。 [3.3]CPを組込んだ色素増感剤の合成は,PCP系についてはpseudo-paraジブロモ[3.3]PCPの合成を行なった。合成は,カップリングによるジブロモ体の合成とモノブロモ[3.3]PCPのブロモ化について行った。まず,カップリングによるジブロモ体の合成では,pseudo-para,-meta,-orthoおよび-geminalの4種の異性体の分離・同定を行った。また,モノブロモ体のブロモ化では,添加する臭素の量により,優先的なpseudo-para位へのブロモ化およびテトラブロモ体の生成を確認した。MCP系においては3層ジブロモ[3.3]MCPの合成を目的とし,前駆体のジオン体までの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5層[3.3]PCPの合成については,カップリング生成物のジオン体の収率が低く5層[3.3]PCPの合成までには至らなかった。3層ジブロモ体の収率が48%と低いこととあわせて,収率向上の条件検討が必要である。 多層[3.3]MCPについては,中心部位となる3層テトラブロモ体の原料となる3層テトラエステル体の合成まで達成した。 色素増感剤架橋部位のジブロモ[3.3]PCPの合成については,pseudo-para,-meta,-orthoおよび-geminalの4種の異性体を37%の収率で得ることができた。pseudo-para+pseudo-meta,pseudo-orthoおよび-geminalの分離はカラムクロマトグラフィーで,pseudo-paraとpseudo-metaはHPLCにより分離を行った。いずれの化合物もHRMSおよびNMR測定により同定でき,pseudo-para,-orthoおよび-geminalについてはX線構造解析にも成功した。また,モノブロモ体のpseudo-para位へのブロモ化では,1.2等量の臭素添加でpara体を20%で,3等量の臭素添加ではテトラブロモ体を30%の収率で得ることができた。臭素添加量の調整により選択的にブロモ化合物の合成が可能であることがわかった。一方,3層ジブロモ[3.3]MCPの合成については,TosMIC法によるカップリングから2層ブロモメチル体を合成し,これと単層のアダクトをカップリングすることで3層ジオン体の合成まで成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
5層[3.3]PCPの合成については,3層ジブロモ体の収率向上を図るとともに,5層ジオン体のカップリング反応についても条件検討を行う。また,得られた5層ジオン体のジアステレオマー分離をHPLCにより行い,さらにジオン体を還元することで5層[3.3]PCPの合成を行い,rigidな積層系[3.3]PCPの物性について各種測定を行なうとともに多層化が及ぼす渡環π電子相互作用の相関関係についても調べる予定である。 多層[3.3]MCPについては,中心部位となる多層テトラブロモ体の合成を行い,対応するTosMICアダクトとカップリングし合成を進める予定である。 ドナー(D)・ブリッジ(B)・アクセプター(A)系の色素増感剤については,架橋部位のジブロモ[3.3]PCPのpseudo-para体および3層ジブロモ[3.3]MCPへドナーならびにアクセプター部位を導入し,色素増感剤および色素増感太陽電池としての物性,機能評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2015年3月23,24日に「ジブロモ[3.3]メタシクロファンについて研究打ち合わせ,およびマススペクトル,元素分析ならびに600MHzNMR測定」の出張を予定していたが,先方都合により2015年3月12,13日に変更したため1,020円の未使用を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は計画的に出張予定を立て執行する予定である。
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Research Products
(9 results)