2014 Fiscal Year Research-status Report
結合切断・生成を高度に含む触媒的分子変換手法の開発
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25410054
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松田 学則 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80359778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロジウム / 環化 / 触媒 / 酸化 / メタセシス / 合成 / 結合切断 / 結合生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数回の炭素-水素結合、炭素-炭素結合の切断を伴う環状骨格構築法の開発を行い、5つの新反応の開発に成功した。 (1)置換基を有する無水マレイン酸と内部アルキンを、ロジウム(III)触媒および銅(II)塩存在下、t-アミルアルコール中、120℃で反応させたところ、無水マレイン酸の脱カルボニル化を伴う形式的な[5 - 1 + 2]型環化付加が進行し、α-ピロンを与えた。 (2)1,4-エンインとアリールボロン酸を、rac-BINAPを配位子として持つロジウム(I)触媒存在下、1,4-ジオキサン中、90℃で反応させたところ、1,4-ロジウム移動を経由する環化反応が進行し、1-(アリールメチレン)インダンを与えた。本反応を(R)-MeO-BIPHEPを配位子として反応を行ったところ、ベンジル位に不斉四級炭素を有する生成物を最高92%eeで与えた。 (3)オルト位にβ-アリール-α,β-不飽和エステル部位を有するフェニルボロン酸エステルを、DPPBZを配位子として持つロジウム(I)触媒存在下、p-キシレン還流下で反応させたところ、1,4-ロジウム移動を経由するスピロ環化反応が進行し、1,1'-スピロビ[インダン]-3-オンを与えた。 (4)置換基を有する無水マレイン酸と1,6-ジインを、ロジウム(III)触媒および銅(II)塩存在下、DMF中、140℃で反応させたところ、形式的[5 - 1 + 2]型環化付加によるα-ピロン生成の後に分子内Diels-Alder反応、続く脱炭酸が進行し、多置換ベンゼンを与えた。 (5)1位にアリール基を有する3-(ピリジルメチレン)シクロブタンを、Wilkinson触媒存在下、p-キシレン中、150℃で反応させたところ、炭素-炭素結合および炭素-水素結合の切断、およびその組み替え(メタセシス)が進行し、1-(ピリジルメチレン)インダンを与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は極めて順調に進展し、この1年間に7報の論文を発表することができた。またその内容も、1,4-ロジウム移動(炭素-水素結合切断)を経由するもの、脱カルボニル化(炭素-炭素結合切断)を伴うもの、小員環化合物(炭素-炭素結合切断)を用いるものがあり、得られる生成物もピロン、多置換ベンゼン、インダン、スピロビインダンと多様性にも富んでいた。 (1)の研究では、23種類のピロン、イソクマリンを得ることができた。(2)の研究では、17種類の1-(アリールメチレン)インダンを、うち7種類を光学活性な生成物として得ることができた。(3)の研究では、10種類のスピロビインダノンを得ることができた。(4)の研究では、23種類の多置換ベンゼンおよび1種類の1,3-シクロヘキサジエンを得ることができた。(5)の研究では、15種類の1-(ピリジルメチレン)インダン誘導体、1種類の1-(ピリジルメチレン)テトラリン、および類似反応による生成物(インダノン、1ーテトラロン)を8種類得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)1,4-ロジウム移動を経由する反応の開発過程で、1,5-ロジウム移動を伴う反応を見出したので、これについて研究を進める。 (2)シクロプロペノンの反応に関しては、H26年度は中止していたため、H27年度に再開する予定である。 (3)窒素-窒素二重結合の切断を伴う興味深い環化反応を見出したので、これについて詳細に検討を行う。 (4)シクロブタンの炭素-炭素結合切断を伴う反応も複数見出しており、この分野の化学の発展がさらに期待できる。 (5)これら以外にも新反応が見つけられるよう精力的に反応探索を行う。
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Causes of Carryover |
1%未満であり、誤差の範囲である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度に問題なく(特に大きな変更もなく)使用される金額である。
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