2014 Fiscal Year Research-status Report
高効率トポケミルミネスセンスの開発を目指した固相トリガリングシステムの構築
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25410056
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
渡辺 信子 神奈川大学, 理学部, 助教 (40291744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 正勝 神奈川大学, 付置研究所, プロジェクト研究員 (10260986)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学固体発光 / ジオキセタン型発光基質 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CTID(Charge-transfer-induced decomposition)型ジオキセタンの立体化学が発光にどう反映するかを直接的にあきらかにするべく、ジオキセタンとトリガー(その分解を誘発する化学種)との固体状態でのシステムを構築し、先例のない固相CUID型発光系を開拓しようとするものである。 26年度では固相CUID型発光系構築の候補となり得るジオキセタンの選定を引き続き行い、また新たなジオキセタン骨格についても検討を行った。候補となるジオキセタンとしては、4-ベンゾアゾリル-3-ヒドロキシフェニル置換双環性ジオキセタンの中でベンゾイミダゾリル置換体についてN位フェニル体およびメチル体についてグラム単位の合成をめざした。合成経路の中で収率およびその再現性に問題のあったカルボキシ基からベンゾイミダゾリル基の構築反応の検討を行い、高効率で再現性良く進行する反応条件を見出した。また、候補骨格の1つであるビアリール置換ジオキセタンのアリールユニットとしてフェナントレン環について検討を行い、フェナントレン環上のジオキセタンとトリガーの位置関係が発光に影響するほか、その安定性に著しい影響を与えることが分かった。また、新たなジオキセタン骨格として1-aryl-5-(tert-butyl-4,4-dimethyl-2,6,7-trioxabicyclo[3.2.0]heptane骨格の4,4-dimethyl基を、より自由度の少ない4-(ethane-1,2-diyl)基に変えたジオキセタンの合成を行った。また、母核となる3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンの固相熱分解ではオキシド安息香酸エステル由来と考えられる発光が確認でき、ジオキセタンのX線構造回析からヒドロキシ基とジオキセタン環酸素間での水素結合が原因であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に合致するCTID型ジオキセタンの候補である4-ベンゾイミダリル-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンのグラム単位での合成について検討を行い、問題となっていたイミダゾリル基構築反応の条件を確立した。新たなジオキセタン骨格として、フェナントレン置換ジオキセタンについて検討し、ジオキセタンとトリガーの置換様式による影響を明らかとした。また、双環性ジオキセタン骨格である2,6,7-trioxabicyclo[3.2.0]heptaneの4,4-dimethyl基を、より自由度の少ない4-(ethane-1,2-diyl)基に変えたジオキセタンの合成を行い、候補となる骨格の幅を広げた。さらに、母核となる3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンの固相熱分解では、ジオキセタンのX線構造回析からヒドロキシ基とジオキセタン酸素間での水素結合が原因でアニオン性発光種が生成していることがわかり、固相特有の発光が確認できた。以上のことより本研究は「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するに当たっては、固体トリアリングシステムの構築とジオキセタンの立体化学と発光の関係を直接明らかに出来るCTID型ジオキセタンの選定が問題となる。固体トリガリングシステムの構築についてまず、候補の骨格の1つである4-ベンゾイミダゾリルおよび4-ベンゾチアゾリル基を有する3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンについて母核ジオキセタンと対照しながら検討を続け、固体トリガリング系の構築を行う。 確立した固体トリアリングシステムを、同一分解物を与える立体異性体が単離されているN置換ジオキセタンおよびビナフチル置換ジオキセタンに適応し、溶液中の測定系では得ることが出来ない、異性体それぞれのジオキセタンの立体の履歴を留めた分解物の単離とその性質を明らかとする。 最終的にはジオキセタンおよび固体トリガリングにより得られた分解物の単結晶X線解析を行ない、ジオキセタンの分解直後に生成していると考えられるde-novoカルボニルの性質を明らかとする。
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Causes of Carryover |
固相トリガリングシステムの構築では、これまでの溶媒系での研究と異なりグラム単位のジオキセタンが必要となる。26年度では候補ジオキセタンの反応経路の改善および新規骨格の合成が主であり、この大量合成を行わなかった。また、共同実験者によるコンピューター支援による費用が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
固体トリガリングシステムの構築のため、基本骨格のジオキセタンおよび4-ベンゾアゾリル-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンについて、その前駆体を含めグラムスケールの大量合成を計画に含める。また、恒温槽および固体発光測定用セルの購入を行う。
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