2013 Fiscal Year Research-status Report
置換活性部位を持つキレート配位子を導入した反応性金属-ケイ素錯体の開発と触媒機能
Project/Area Number |
25410058
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小室 貴士 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20396419)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 金属-ケイ素錯体 / イリジウム錯体 / ビス(シリル)配位子 / キレート配位子 / 配位不飽和錯体 / 触媒反応 / 水素化 / ヒドロシリル化 |
Research Abstract |
本研究では,2つのシリル配位子部分がキサンテン骨格で連結された多座配位子(以下xantsil("キサントシル")と略記)を持つ新しい配位不飽和イリジウム錯体の合成,および同錯体を触媒とした反応について検討し,下記1,2の成果が得られた。 1 4,5-ビス(ジメチルシリル)-9,9-ジメチルキサンテンxantsilH2とIr(I)クロリド(シクロオクテン)錯体とを反応させた後,ホスフィンPCy3を加えさらに反応させることで,Si-H酸化的付加を経てビス(シリル)配位子xantsilを持つイリジウム-ホスフィン錯体Ir(xantsil)(PCy3)Cl (1)が得られた。X線結晶構造解析により,錯体1は結晶中で金属周りがシーソー型の幾何構造をとり,PCy3の2つのシクロヘキシル基にあるC-H結合と金属との間に極めて弱いアゴスチック相互作用を持つことがわかった。この相互作用を無視すると1は形式的に14電子錯体みなせる。また,NMRスペクトルの測定結果から,錯体1は固体状態では単一の14電子型の錯体として存在するのに対し,溶液中では14電子型錯体と,xantsilが2つのケイ素とキサンテン骨格の酸素とで三座配位した16電子型の錯体(推定構造)との平衡混合物となることが明らかとなった。 次に,錯体1のクロリド配位子をトリフラト配位子に置換すると,xantsilがSiOSi型で三座配位した16電子錯体2へと定量的に変換されることがわかった。 2 得られた錯体1は,1気圧の水素雰囲気下で3,3-ジメチル-1-ブテンを水素化する触媒となることがわかった。また,化学量論反応の結果から,この触媒反応は1に水素分子が酸化的付加したジヒドリド錯体の生成を経て進行することが示された。さらに,1はジフェニルアセチレンの第三級シランによるC≡C三重結合のヒドロシリル化に対しても触媒活性を示すことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,今年度の研究によって,xantsil配位子を持つ9族遷移金属(イリジウム)の配位不飽和錯体1,2の合成を達成するとともに,その分子構造と性質について調べ,xantsilがイリジウムに対してSiSi型およびSiOSi型で配位できることを明らかにした。また,錯体1が不飽和有機分子の水素化・ヒドロシリル化に対して触媒活性を持つことを明らかにした。これらの研究成果を次年度以降に発展させることで,今後同錯体およびその類縁錯体を触媒とした様々な反応が開発できると期待される。したがって,現在のところ本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で合成した配位不飽和イリジウム-xantsil錯体1,2の反応性・触媒活性に関する研究を発展させ,同錯体を触媒とした新しい反応の開発を目指す。また,金属や配位子によって錯体の構造・反応性がどう変化するかを系統的に明らかにし,より高活性な触媒を開発するための基礎的知見を得るため,(1)イリジウム以外の9族および10族遷移金属(Co, Rh, Ni, Pd, Pt)のxantsil錯体,および(2)錯体1,2のxantsil以外の配位子部分を変えた類縁錯体をそれぞれ合成し,その触媒性能を比較する予定である。さらに,xantsilの類縁配位子として,同配位子の片方のシリル配位子部分をホスフィン配位子部分に変えた新しい多座配位子を最近開発したので,その9族および10族遷移金属錯体についても併せて合成を検討し,得られた錯体の反応性および触媒活性をxantsil錯体と比較する予定である。
|