2014 Fiscal Year Research-status Report
アセチルCoA合成経路を担う鉄・ニッケル酵素をモデルとする炭素固定反応の開拓
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25410066
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 剛 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 准教授 (50311717)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニッケル酵素 / アセチルCoA合成酵素 / COデヒドロゲナーゼ / 炭素固定 / モデル研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
アセチルCoA合成酵素のモデル研究:活性中心であるニッケル二核錯体部位にジアミドジチオラート型で配位するテトラアニオン性トリペプチドCys-Gly-Cysのモデルとして、テトラアニオン性N2S2配位子であるmbea (H2mbea = N,N’-(3-Hydrothio-3-methylbutyryl)-o-ethylenediamine)を導入した種々の二核ニッケルモデル錯体の合成を検討している。前年度、合成に成功したNi(II)-Ni(II)メチル錯体 [Ni(mbea)Ni(Me)(STip)](1)および[Ni(mbea)Ni(Me)(acetone)](2)は酵素反応中間体モデルと考えられるため、これらを用いたモデル反応を検討した。錯体(1)とCOの反応からACS類似反応の一部が進行することはすでに見いだしていたが、錯体(1)の生成段階、すなわち還元状態にあるNi(II)-Ni(0)二核錯体[Ni(mbea)Ni(cod)] とMeIおよびTipSKから錯体(1)が生成することが明らかとなった。これによって一連のACSの反応を段階的に達成し、形式的な酵素反応モデルサイクルを構築することができた。
COデヒドロゲナーゼのモデル研究:独自に開発した三座チオラート配位子TefpS3を導入した[4Fe-4S]クラスターの1つの鉄上にSH基を導入した。このSH基を足がかりとしてTp*基を補助配位子とするNi 錯体Tp*Ni(OH)を作用させたところ、[4Fe-4S]クラスターとニッケル錯体がスルフィドで架橋された[4Fe-5S-Ni]錯体の合成に初めて成功し、その構造をX線解析によって明らかにした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アセチルCoA合成酵素のモデル研究は予定通り順調に進捗しており、特に、これまでモデル反応検討の鍵となる酵素反応中間体モデルの合成収率が十分でなかったため反応検討の実験が限られていたが、今年度当初に安定的な合成手法を確立することに成功し、モデル反応検討による酵素反応機構解明を大きく加速することができた。すなわち、錯体酵素活性中心の構造を模倣したモデルを合成するだけでなく、酵素基質であるCOやチオラートとの検討を段階的に検討することが可能となり、形式的に触媒反応サイクルをすべて実現に成功することに成功した。アセチルCoA合成酵素の反応サイクルは、実際の活性中心に類似した配位構造をとるジアミドジチオラート配位子を用いて達成した初めてのACSモデルサイクルであり、実際の酵素においても、Ni(II)-Ni(0)状態を活性状態として、メチルカチオン源、CoAチオラート、COの順で酵素反応が進行しうることを示す重要な結果である。 またCOデヒドロゲナーゼについても、これまで先例のない活性中心モデルである[4Fe-5S-Ni]クラスターの構築に成功した。この成果は、新規なCOデヒドロゲナーゼモデルクラスターに成功したこと以上に重要な意味を持っている。それは、[4Fe-4S]上のSH基を利用して他の金属錯体と連結させる上で、金属ヒドロキシ錯体が有用であるという知見である。本クラスター成功に至るまで、ニッケル上にハライドやSHをもつ類縁体との反応を検討したが、いずれも[4Fe-4S]上のSH基がハライドに置換されたクラスターが得られるのみで、ニッケルを連結するには至らなかった。唯一、ニッケルヒドロキシ錯体との反応で本クラスターの合成に至り、今後はヒドロキシ錯体を用いた金属導入を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗しており、今後の実施計画に大きな変更はない。ACSのモデル研究については、さらに酵素反応中間体として考えられる錯体類の合成を進めるとともに、COとモデル錯体の反応を溶液中で赤外分光に寄って追跡し、ACS酵素反応のより詳細な機構解明をめざす。またCOデヒドロゲナーゼモデル研究を前年度から本格的に開始している。三座チオラート配位子を導入した[4Fe-4S]クラスターを合成し、チオラートが配位していない1つの鉄上を様々な配位子で置換した[4Fe-4S]クラスターを合成し、その反応性や酸化還元挙動を明らかにすることよって、COデヒドロゲナーゼが二酸化炭素をCOに還元する機構を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に同位体ラベルされたCOガスを購入予定であったが、モデル錯体の合成が順調に進捗したため、H26年度はモデル錯体の合成と反応による生成物の同定を優先させることとし、詳細な反応機構解明に必要となる当該COガスはH27年度に購入することにした。これにより研究の進展に支障は生じない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り同位体ラベルされたCOおよびCO2ガスを購入する。また本研究課題の最終年度にあたるH27年度は、研究成果をとりまとめて国際会議等で講演を行い、その成果を世界にアピールする必要がある。そこで、関連する国際会議の参加費と旅費に充当する。
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Research Products
(8 results)