2014 Fiscal Year Research-status Report
再生型有機ヒドリド供給能を有する金属錯体を用いた二酸化炭素の多電子還元反応
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25410067
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大津 英揮 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80433697)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属錯体 / 二酸化炭素多電子還元 / 有機ヒドリド / 再生可能エネルギー / 光還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究である「再生型有機ヒドリド供給能を有する金属錯体を用いた二酸化炭素の多電子還元反応」は、二酸化炭素改質による化学・電気エネルギー相互変換システムを念頭に置き、自然エネルギーによる光や電気エネルギーを化学エネルギー(有機ヒドリド)として貯蔵した錯体分子による二酸化炭素の触媒的多電子還元反応の開発を目的としている。前年度(平成25年度)においては、光エネルギーを利用した二酸化炭素の触媒的ヒドリド還元反応系の高効率化に関する研究に取り組み、NADHモデル配位子であるpbnHH配位子やpbnHH配位子のピリジン環の3位にメチル基を導入した3Me-pbnHH配位子を有する両Ru錯体の構造学・分光学・光化学・電気化学的特性や二酸化炭素へのヒドリド還元特性の比較・検討を行うことで、メチル基による構造特性に起因する二酸化炭素からギ酸への還元反応の加速効果を見いだしただけではなく、本反応のトリガー物質である塩基の塩基性度によっても二酸化炭素還元の反応速度を制御できることがわかった。本年度(平成26年度)では、平成25年度で得られた知見を基盤としながらも、二酸化炭素からギ酸への変換で満足することなく、さらなる還元物質であるメタノールへの変換を志向し、(1)基質結合部位を有する新規金属錯体の合成とその光・電気還元反応特性の解明および二酸化炭素還元中間物質との反応性の検討、(2)複数のヒドリド源を組み込んだ新規二酸化炭素多電子還元錯体触媒の開発、を行った。(1)に関しては、水性ガスシフト反応を利用したpbnHH配位子および二酸化炭素の二電子還元物質である一酸化炭素が配位したRu錯体の合成・単離に成功し、(2)に関しては、二つの有機ヒドリド生成・供給部位を持つ酸化型(NAD+型)bbnp配位子や還元型(NADH型)bbnpH4配位子を有する両Ru錯体の合成・単離手法を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度における研究で見いだした一酸化炭素雰囲気下含水中におけるRu-pbn錯体からRu-pbnHH錯体への変換反応は、水性ガスシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)における水由来のプロトンから水素への還元反応に代わり、pbnからpbnHH配位子への還元反応が進行し、Ru-pbnHH-CO錯体が得られたものと考察できる。これまでに、水性ガスシフト反応を触媒する分子性金属錯体の報告例は数多くあるが、水素発生する代わりに有機化合物を還元する反応の報告例は殆どなく、本知見は特筆すべき研究成果であると言える。さらには、pbn配位子のピリジン環の3位にメチル基を導入した3Me-pbn配位子を有するRu錯体を用いて同様に反応を行った場合、選択的にC-CカップリングしたRu錯体が生成することを見いだし、そのX線結晶構造解析にも成功している(論文投稿準備中)。以上のことにより、本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
金属錯体内に基質を結合させることにより、基質自身の電子密度が低下し、より還元され易くなると考えられるため、基質結合部位を有する金属錯体に関する研究は、今後、二酸化炭素からメタノールへの多電子還元反応の達成へ向けて非常に重要な知見を与えることが予想される。そこで、二酸化炭素や二酸化炭素還元中間物質(一酸化炭素、ギ酸、ホルムアルデヒド)の基質結合部位を有し、かつ、NADHモデル配位子であるpbnHHやbbnpH4配位子におけるヒドリド源となり得るジヒドロベンゾナフチリジン環部位の8位の水素が基質近傍にくるよう設計したRu錯体の合成・単離に取り組む。これら錯体の分光学・光化学・電気化学的特性は勿論のこと、光や電気エネルギーによる還元反応特性や二酸化炭素・一酸化炭素・ギ酸・ホルムアルデヒドとの反応性の検討を行い、ヒドリド能の評価や、光・電気によるヒドリド源の再生能力、さらには、反応中間体の同定など、詳細な反応機構を解明することで、二酸化炭素をメタノールへと多電子還元し得る高活性な錯体触媒の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
研究を遂行する上で必要に応じて研究経費を執行し、かつ、試薬や実験用器具を精査して購入するなど、研究経費のより効率的な使用に努めた結果、次年度使用額に差が生じ、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
配位子や金属錯体を合成するための試薬やガラス器具購入費に充て、本研究を当初の予定以上に進め、加速度的に発展させるべく、有効に使用する。
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