2014 Fiscal Year Research-status Report
明確な結合方向を持つユニットを利用した共有結合性かご状分子の創製
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25410087
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 公輔 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30579313)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | かご状分子 / 動的共有結合 / ボロキシン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、2つのフェニルボロン酸が様々な骨格で連結されたジボロン酸を40個以上合成することに成功している。ボロン酸は3分子で脱水縮合し、ボロキシンが可逆的に形成されることが知られているため、ジボロン酸からのボロキシン形成反応を検討することでナノメートルサイズの巨大な内部空間を有する共有結合性かご状分子の構築を目指した。ジボロン酸からのボロキシン形成反応により構築可能な構造体は、正八面体、立方八面体、二十・十二面体の三種類(それぞれジボロン酸の6量体、12量体、30量体にあたる)が考えられ、それぞれ隣接する2つのフェニルボロキシン面のなす角度が71度、110度、138度が理想と考えられる。そこで、本年度は4,5-二置換カテコール、3,6-二置換カルバゾールを骨格に有するジボロン酸a,bから6量体のボロキシンケージの構築を目指し、ボロキシン形成反応を調査した。まずカテコール骨格を有するジボロン酸aのボロキシン形成反応を検討した。重クロロホルム中、aの1H NMRを測定したところ、ボロン酸とボロキシンの混合物であったため、トルエン中で加熱し脱水したところ、単一のボロキシンに収束した。すなわち、脱水するだけで定量的なボロキシン形成に成功した。その質量分析を行ったところ、予期に反し3量体が生成していることが明らかになった。そこで次に、C-B結合のなす角が84度に広がったカルバゾール骨格を有するジボロン酸bのボロキシン形成反応を検討した。ジボロン酸bをクロロホルム中で長時間加熱するだけでは、ボロキシンに収束しなかったが、MS4Aで脱水することによりボロキシンに収束させることに成功した。さらに、その単結晶X線構造解析に成功し、1.5 nmの内部空間を有する八面体型の6量体ボロキシンケージの構造を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、ナノメートルサイズの大きな内部空間を有する共有結合性かご状分子を構築することにある。本年度は、動的共有結合の一つである、可逆なボロキシン形成反応に着目し、前年度までに合成したジボロン酸ライブラリの中から、いくつかのジボロン酸についてそのボロキシン形成反応を検討した。その結果、ボロキシンケージ3量体と6量体を構築することに成功した。ボロキシンケージ6量体は、単結晶X線構造解析にも成功し、正八面体型のかご状構造、そして内部空間が1.5ナノメートルに及ぶことを明らかにすることができた。本研究課題の目的である明確な結合方向をもつユニットを利用した共有結合性かご状分子の構築を1つ達成できたと言える。今後さらなる巨大な共有結合性かご状分子構築に向けて大きな知見を得ることができ、当初の計画以上に研究課題が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、可逆なボロキシン形成反応に着目し、ジボロン酸からのボロキシン形成反応を検討することで、ボロキシンケージ3量体と6量体を構築することに成功した。ジボロン酸からのボロキシン形成反応により構築可能な構造体は、今回構築した正八面体以外に、立方八面体、二十・十二面体(ジボロン酸の12量体、30量体にあたる)が考えられる。そこで、来年度は、ジボロン酸の2つのCB結合角がさらに広がった、ジボロン酸のボロキシン形成反応を検討することで、立方八面体、二十・十二面体型のかご状分子(ボロキシンケージ12量体、30量体)の構築とその同定法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度、前年度合成した、ジボロン酸を利用したボロキシン形成反応の検討を中心に行った。いくつかのジボロン酸を試した段階で思いがけず、目的のナノメートルサイズの共有結合性かご状分子を構築することに成功した。そのため、再度、大幅な分子設計から見直す必要がなくなったため、当初予定していた使用額より少なくて済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度はさらなる巨大な共有結合性かご状分子の構築を目指す。その際、大きさは数ナノメートルにおよび、分子量は数千に達することが予想され、その同定は低分子のものとは大きく異なる。そこで様々な検討が必要となると考えられ、その際の必要経費に繰越額を充てる予定である。
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