2016 Fiscal Year Research-status Report
Development of single crystal devices based on discrete organic molecules
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25410090
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
今久保 達郎 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (60291332)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単結晶 / カチオンラジカル塩 / 中性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究により得られた、TTF系有機伝導体を用いたヘテロ接合型単結晶への電圧印加ルーティンの違いによる電流値の変動挙動について、特に再現性に重点を置いて実験的検証を行った。単結晶成分としては、低分子を用いた有機伝導体としては比較的大きく成長し、なおかつ単結晶外形が六角柱状の明確なものを安定的に得ることが可能な、ヨウ素とピラジン環を併せ持つTTF誘導体DIP(ジヨード(ピラジノ)テトラチアフルバレン)をドナー分子に、八面体型の一価の陰イオンであるヘキサフルオロホスフェートを対アニオンとし、結晶溶媒としてエタノール等の各種アルキルアルコール、酢酸エチルあるいはアセトンを含むものについて検討を行った。その結果、いくつかの結晶について特定のルーティンを用いた電圧の印加を行うことで、六角柱状の細長い単結晶の一部分がオレンジ色に変色する新たな現象が見いだされた。この変色した部分は、もとの接合したカチオンラジカル塩の黒茶色の単結晶の片方に接した形、もしくはその界面から生成生していた。また一方で、全てのサンプルで同様の現象が起こるのではなく、サンプルによっては電圧印加が原因とみられる結晶の溶融・分解によるタール状物質への変化も観察された。そこで、現象の再現性の確認と、よりシンプルな物質系での検証を行う目的で、DIPを用いたヘテロ接合型ではない通常の単結晶を用いて検証を開始し、カチオンラジカル塩単結晶の中性化と溶融・分解の二つの結果を分かつ原因と考えられるものの候補について、いくつかの可能性を見い出すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は予期していなかった、単一成分からなる単結晶の後からの部分的中性化が新たな現象として見い出されたことから、その再現性と適用可能範囲に関する検討のための確認実験が必要となった。当初計画では予想していなかった現象ではあったが、結果としてより簡単にヘテロ接合型の単結晶素子を作成出来る可能性があり、成果の面では当初計画以上に進展し、時間的な面からはやや遅れているという状況である。以上の結果を総合して、進捗状況の評価としては概ね順調に進展していると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長を申請済みであり、有機伝導体のカチオンラジカル塩単結晶の部分的中性化現象について、再現性の高い実験条件の確認とその原理の解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
単結晶素子の作成に広く応用が可能な興味深い新現象を見い出したが、複数の結晶で行った結果にサンプル依存性が見られたことから物性測定に多くの時間が必要となり、結果としてサンプル作成のための経費を次年度使用額として繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
有機ドナー分子の合成とカチオンラジカル塩の作成のための試薬類を購入する。
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