2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25410099
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中村 光伸 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50285342)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | DNA / ジケトピロロピロール / 自己組織化 / 色素集合体 |
Research Abstract |
積層化した色素分子はπ相互作用により、分子間での電荷およびエネルギーの移動が可能であり、その性質を利用して有機トランジスタなどの電子デバイスへの応用が期待されている。生体分子であるDNAは高い自己組織化能と分子選択性をもつことから色素分子を集積させるテンプレートに適した高分子材料である。本研究では高い蛍光特性と熱安定性をもつ色素であるジケトピロロピロールに核酸塩基レセプターであるサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(DPP)とDNAとによる色素分子組織体の形成について検討した。 その結果、DPPは500-600 nmの領域にジケトピロロピロールに起因する吸収帯を持ち、この吸収帯はdT20の添加に伴い吸光度が減少した。このような淡色効果は鎖長の異なる他のDNA (dT30, dT40)でも観察された。またDPPは560 nm付近に極大を持つ蛍光を示し、dT20を添加するにつれて蛍光強度が減少した。従って、淡色効果および蛍光消光よりDPPのZn-サイクレン部位はDNAチミンと選択的に結合し、ジケトピロロピロール部位が互いに会合していることが示唆された。DPPとDNA (dT10, dT20, dT30, dT40, dT50)の混合溶液のCDスペクトルでは500-600 nmのDPPの吸収帯領域に誘起CDシグナルが観測された。アキラルであるDPPは誘起CDシグナルを示さないことから、DNAとの混合による誘起CDシグナルは会合によるDPP間の励起子結合に起因していると考えられる。ゲルろ過クロマトグラフィーではチミンの吸収波長である260 nmとDPP由来の520 nmにおいて同じ溶出時間にピークが現れ、DNA鎖長に対応して溶出時間が変化した。このことからDNAの鎖長に応じた長さの組織体が形成されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、色素であるジケトピロロピロールに核酸塩基レセプターであるサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(DPP)の合成に成功し、チミンのみからなるオリゴdT-DNAとの自己組織化によるDPP組織体が形成されることをUV-vis滴定より見出し、またゲルろ過クロマトグラフィー、質量分析等より形成される組織体がDNA鎖長に対応した質量分布のない単一構造の組織体であることを明らかにした。さらに円二色性スペクトルにより色素組織体中の色素分子間の立体配置に関する情報を得ている。以上の理由より交付申請書に記載した研究目的どおり順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
色素組織体の光電変換特性の評価:色素組織体の電荷伝達機能を光電変換により評価するために色素組織体の単分子膜を金(Au)基板上へ固定化した電極を作製する。固定化電極の作成は末端をジスルフィド修飾したオリゴDNA(dTn)を用いて色素組織体を構築したのち金基板上にAu-S結合を介して固定化する。単分子膜中の色素組織体を選択的に光励起して発生する電流を測定することにより光電変換特性を評価する。光電流の測定は電子キャリアを含む緩衝溶液中で色素組織体を固定化した電極を作用極、白金を対極、Ag/AgClを参照電極とする三電極法により行い、アクションスペクトルにより実際に光電流が選択的に励起した色素組織体から発生していることを確認し量子収率を求める。 光電変換特性の向上:電子ドナーおよび電子アクセプターとなり得る2種の色素組織体を用いてそれらを固定化したヘテロ接合型の電極を作製し、光電変換効率を評価する。特に色素組織体の混合比と変換効率との相関を明らかにし、変換効率の向上を図る。 レセプター置換基による変換特性の検討:チミンへの結合形態がZn-サイクレンと異なるレセプター部位を用いることで色素組織体中の色素間の空間配置が異なり、その結果、組織体の電子状態や光電変換特性も違ってくることが期待される。そこでZn-サイクレン以外のレセプター部位として、トリアジン基などを導入した色素ユニットを用いて、色素組織体の構築を行う。構築した色素組織体の化学量論および構造を明らかにした上で、変換特性を評価し、最適な色素組織体を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はクロモホアビルディングブロックの合成に比較的短期間に成功したため、合成に必要な試薬・溶媒等に計画していた物品費が小額になった。 生じた次年度使用額は新たなクロモホアビルディングブロックの合成ならびに光電変換特性の評価に必要な試薬、電極、ガラスセル等の購入に使用する。
|
Research Products
(9 results)