2014 Fiscal Year Research-status Report
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25410099
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中村 光伸 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50285342)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA / ジケトピロロピロール / 自己組織化 / 色素集合体 / 光電変換 / ナフタレンジイミド |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成を模倣して光エネルギー変換システムを構築するためには色素分子の空間制御が変換効率を向上させるうえで重要な鍵であり、さまざまな手法で色素分子の空間制御が検討されている。DNAは、色素組織体を構築するための鋳型材料としても利用でき、希望する数の色素分子をその立体配置を制御して配列できるという他の鋳型材料にはない特徴を持っている。 これまでにチエニル基を持つジケトピロロピロールに核酸塩基レセプターであるサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(DPP)とチミジンのみからなるオリゴDNAとによる色素分子集合体の形成について検討し、UV滴定、ゲルろ過クロマトグラフィー、CDスペクトルにより、DNAの添加によりサイクレン亜鉛錯体部位がチミンと選択的に結合し、ジケトピロロピロール部位が互いに会合した集合体を形成し、かつその集合体はDNA鎖長に応じた長さの集合体が形成されることが示唆された。 さらにDPPおよびナフタレンジイミドにサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(NDI)と3'-末端をチオール(SH)基で修飾したDNAを用いて色素分子集合体を構築し、それらを金(Au)電極上にAu-S結合を介して固定化した修飾電極の作製とその修飾電極の光電変換特性について検討した。DPP集合体のみを固定化した電極では、犠牲剤にアスコルビン酸を用いたところ、光照射によりアノード電流が発生し、メチルビオロゲンを用いた場合にはカソード電流の発生が確認された。また、光電流は集合体を形成するDNAの鎖長に対応したことから、光電流は犠牲剤および集合体を形成するDNAの鎖長により制御できることが明らかになった。また、NDI集合体と共に固定化したヘテロ接合型の電極では、DPP集合体のみを固定化した電極にくらべ2倍以上の光電流が得られたことから、DPP集合体からNDI集合体への効率的な電荷移動が起こっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はチエニル基を持つジケトピロロピロールに核酸塩基レセプターであるサイクレン亜鉛錯体を連結した分子とチミジンのみからなるオリゴDNAとによる色素分子集合体の形成について分光学的手法により、ジケトピロロピロール同士がπスタックして階層化した集合体を形成することを明らかにした。 平成26年度は3'-末端をチオール(SH)基で修飾したDNAを用いて構築したジケトピロロピロール集合体を金表面上にAu-S結合を介して固定化した修飾電極を用いて集合体の光電変換特性の検討を行い、犠牲剤により光電流のスイッチング制御と、さらにDNA鎖長により光電流の制御が可能であることを証明した。また、ジケトピロロピロールに対して電子アクセプターとなり得るナフタレンジイミドの集合体を共存させて固定化することによりヘテロ接合型の修飾電極の開発に成功し、この電極が高い変換特性を示すことを見出し、DNAにより色素分子を組織化することがジケトピロロピロールとナフタレンジイミドの電荷移動錯体形成を抑制して光電流の増強に重要な役割を果たすことを明らかにすることができた。光電変換の量子収率を決定するために、電極上にある集合体の固定化量をAu-S結合の電気化学的酸化により見積もることを試みたが、この手法では固定化量を過大に見積もってしまうことがわかった。現在、その解決策として透過吸収により直接的に固定化量を決定する方法を検討している。 以上のように量子収率を決定に関しては未だ決定できていないものの、交付申請書に記載した研究の目的をほぼ達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
色素集合体固定化量の検討:これまでは金の棒電極を使って修飾電極を作製し、光電変換特性の評価を行ってきたが、この電極では色素分子の固定化量を電気化学的手法でのみしか評価できない。電気化学的手法では固定化量を過大に見積り誤差が大きくなる傾向があり、そのため量子収率にも誤差が生じてくる。そこで平成27年度は金蒸着したガラス電極を用いて色素集合体の固定化を行い、吸収スペクトルによりジケトピロロピロールとナフタレンジイミド集合体の固定化量を精度よく求め、光電変換の量子収率を求める。 光電変換効率の向上:ジケトピロロピロールとナフタレンジイミドのヘテロ接合型の修飾電極にすることにより効率が向上することを明らかにしてきたが、今後はこれらの電極上のそれぞれの色素組織体の固定化量の比を変化させることでさらなる効率の向上を目指す。一方で置換基の導入により酸化還元電位の異なるジケトピロロピロールおよびナフタレンジイミドを設計・合成し、これらの色素組織体による光電変換効率の向上を検討する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は色素集合体修飾電極の作製に関して、修飾表面の評価については更なる検討が必要なものの、定性的に良好な電極が予定より早く作製できるようになったため、修飾電極作製に充当を予定していた物品費が小額になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は金蒸着ガラス電極へ色素集合体の固定化を計画しており、金蒸着ガラス電極の購入と、あらたな色素合成に必要な試薬、溶媒の購入に次年度使用額を使用する。
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Research Products
(7 results)