2013 Fiscal Year Research-status Report
超臨界水の特性を利用したボトムアップのナノ乳化手法
Project/Area Number |
25410103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
出口 茂 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, チームリーダー (40344296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 圭剛 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, ポストドクトラル研究員 (20710073)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コロイド・量子ドット / エマルション |
Research Abstract |
MAGIQ乳化は、超臨界水と炭化水素の均一溶液を急冷し、相分離によって炭化水素を極微細な油滴として析出させるという、ボトムアップの原理に基づく全く新しい乳化手法である。これまでは1体積%のドデカンを非イオン性界面活性剤であるBrij 97を乳化剤に用いて乳化する系に絞って実験を行ってきた。しかしながら超臨界水とドデカンが任意の割合で相溶するという相挙動を利用したMAGIQによる乳化は、原理的には任意の体積分率のドデカンを乳化できると考えられる。これを検証するため、本年度はドデカンの体積分率を変化させてMAGIQ乳化を行った。水とドデカンの混合温度などの乳化条件は、1体積%ドデカンを乳化した際に最も小さな油滴が得られた条件に固定した。0.5、2、10体積%のドデカンをMAGIQ乳化したところ、いずれの場合でもナノエマルションが得られた。また得られた油滴サイズはBrij 97の濃度に依存し、最小油滴サイズを与えるBrij 97濃度はドデカンの量とともに増加することがわかった。 これらの結果をまとめた論文は、Angewandte Chemie International Edition誌に掲載された。論文は高く評価され、掲載時にはジャーナルからプレスリリースが出されるとともに、熱水噴出孔の写真が掲載号のBack Coverに採択された。また海洋研究開発機構からもプレスリリースを行なった。その結果、日刊工業新聞、日経産業新聞、および国内外のオンラインメディアに関連記事が掲載された。 さらにMAGIQ乳化技術の産業応用の可能性を探ることを目的に、第4回国際化粧品開発展(2013年6月26日-6月28日、東京ビッグサイト、東京)および第13回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(2014年1月29日-1月31日、東京ビッグサイト、東京)においてブース出展ならびにセミナーを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1)MAGIQ乳化手法の確立、2)MAGIQ乳化の応用の2つである。1)に関しては、MAGIQ乳化の基本原理、ならびに性能を纏めた論文を発表済みであり、従来の「トップダウン」の乳化手法と比べた新手法の特長を検討する段階に入った。2)に関しては、乳化を必要とする様々な産業界の企業から多数の問い合わせを受けている段階であり、今後は共同研究などを通して産業応用に繋げられる可能性が出てきている。これらを総合すると、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年2月に、所属機関より措置された研究費によって高圧ホモジナイザーを導入した。高圧ホモジナイザーは、ナノエマルションを製造するために工業的に広く使われている。今後は組成が同じ試料をMAGIQ乳化と高圧乳化で乳化し、得られるエマルションの性質(油滴サイズ、安定性等)を比較検討することによって、「トップダウンの乳化」と「ボトムアップの乳化」との違いを明確にして行く予定である。 通常のトップダウンの乳化では、乳化剤には1)油水界面の界面張力を低下させ粗大油滴の微細化を促進する、2)油滴を安定化する、という2つの機能が求められる。一方、油滴形成が相分離によって進行するボトムアップのMAGIQ乳化では、界面活性剤に求められる機能は後者のみである。今後はBrij 97とは異なる乳化剤を用いた実験によって、乳化剤選択におけるMAGIQ乳化の優位性を示す実験も行う。 国際化粧品開発展、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議のアウトリーチの場を利用して、民間企業複数社と話し合いを持ったところ、MAGIQ乳化装置の市販を求める意見が多数寄せられた。今後は、市販化に向けたMAGIQ乳化装置プロトタイプの設計・試作等も検討する予定である。
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