2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25410113
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柴富 一孝 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378259)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | SN2反応 / 不斉塩素化反応 / Williamson合成 / フェノキシ化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機ハロゲン化合物は様々な分子変換反応に広く利用されている。これはハロゲン原子の優れた脱離能によるものである。特に不斉炭素上にハロゲン原子を導入した場合,続いて立体特異的な置換反応を行うことで光学純度を維持したまま様々なキラル化合物へ誘導することができる。SN2反応はこのような立体特異的置換反応の代表例であるが,1)三級炭素上では殆ど進行しない,2)立体情報が失われるSN1反応が競合するなどの制約がある。これらの制限を克服できるならば “ハロゲン化不斉炭素の構築と,それに続くSN2反応” という合成スキームは多置換不斉炭素を構築する有効な手法となる。我々は最近,独自に開発したスピロ型キラルオキサゾリン配位子の二価銅錯体を触媒とした活性メチン化合物の不斉塩素化反応に成功した。本塩素化反応は高いエナンチオ選択性を示す上に,従来に無い広範な基質適用範囲をもつ。さらに得られた塩素化物のSN2反応が金属アジドおよびアルキルチオールを求核剤とした場合に円滑に進行することを見いだした。本反応は三級炭素上でSN2反応が進行する極めて珍しい例である。そこで本課題では本手法の一般性を拡大し,従来合成困難であった化合物群の不斉合成を目指した。具体的には,フェノール類を求核剤としたαークロローβーケトエステルのSN2反応を行い、適切な条件下で目的とするαーフェノキシーβーケトエステルが高収率かつ光学純度を損なうこと無く得られることを見いだした(最高96% ee)。本手法は、不斉炭素状にフェノキシ基を有するキラル化合物を合成できる数少ない手法である。さらに、得られた化合物を糖尿病治療薬の候補分子など、幾つかの生物活性物質へと誘導することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はαークロローβーケトエステルの水を求核剤としたヒドロキシル化反応を中心に検討する予定であったが、研究遂行の中で、フェノール類を求核剤とした反応を見いだすことができた。得られた生成物は従来不斉合成法の知られていない化合物であり、新たなキラル医薬品の開発に貢献すると期待できる。現在本成果の論文執筆が終了し、学術雑誌へ投稿中である。また、当初から検討していたヒドロキシル化反応も順調に進行しており、最終年度には本反応の基質一般性の拡大、および生理活性物質合成への応用を完成させる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、αークロローβーケトエステルの水を求核剤としたSN2反応により、αーヒドロキシーβーケトエステルを合成する。現在、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを塩基として用いることで反応が円滑に進行することを見いだしている。本反応では光学純度が低下しないことも確認している。本反応条件を用いて様々なαーヒドロキシーβーケトエステルを不斉合成する。さらに得られた化合物の生物活性物質合成への応用を行う。また、トリフルオロメチルアニオン、トリフルオロメチルチオアニオン等を利用したSN2反応にも挑戦し、有用な含フッ素医薬合成ブロックの創成を目指す。
|
Causes of Carryover |
当初、αーヒドロキシーβーケトエステルの合成を主に検討する予定であったが、研究中にα-フェノキシーβケトエステルの合成方法を発見するに至った。後者の反応の新規性、有用性が非常に高いと判断したため、優先して研究を行った結果、当初の予算計画と実使用経費に差が生じた。具体的には、フェノキシ化反応においては、幸運にも比較的安価な反応剤を利用することで良好な成果が得られたため、消耗品費を抑制することができた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた多様なキラル四置換炭素の構築法開発に加えて、αーヒドロキシーβーケトエステルの合成を完成させる予定である。差額分は追加検討課題の推進に充当する予定である。差額分の主な使途は消耗品(反応剤、有機溶媒)の購入費用とする予定。
|