2013 Fiscal Year Research-status Report
可動な結合点を基盤とするナノ-マクロ構造変換材料の創成
Project/Area Number |
25410125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
打田 聖 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70343168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子合成 / ナノ材料 / ロタキサン |
Research Abstract |
本研究ではロタキサン部位を可動な結合点とした高分子を合成し、その高分子鎖のトポロジー変換に伴いマクロな物性が変化するような材料を創成することを目的としている。今年度ではこれまでに確立した高分子[2]ロタキサンの環状部分や貫通高分子鎖末端などの位置に別の高分子鎖や官能基を結合し、線状から分岐状へとトポロジー変換する高分子を合成した。 まず、嵩高い官能基を挟んで両端に開始剤となる水酸基を有する軸分子を合成し、さらに水酸基を有する輪分子(クラウンエーテル)と擬ロタキサン構造を形成することで、3官能性の擬ロタキサン型開始剤を得た。この開始剤からデルタ-バレロラクトンを重合することで、軸分子の両端および輪分子からそれぞれ高分子鎖が伸長した3本鎖高分子を合成した。 次にクラウンエーテルと錯形成を行っている軸分子上のアンモニウム部位をアセチル化することで、クラウンエーテルとの相互作用を切断した。この際、自由に並進運動できるクラウンエーテルが末端までいどうすることで、直鎖状高分子鎖へと変換された。 この分岐鎖から直鎖へのトポロジー変換はGPCや粘度測定などによってその流体力学的半径の増加を確認した。 このようにしてロタキサンを連結点とする高分子を合成することで、分岐状から線状へのトポロジー変換を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたA2B型分岐とABA型直鎖のトポロジー変換を裏づける重要な実験として、同一成分からなる高分子鎖を用いて分岐状から直鎖状へのトポロジー変換を確認した。 今年度の知見によりA2B分岐からABA直鎖へのトポロジー変換だけでなく、線状から環状など様々なトポロジー変換が可能となるという確証を得ることができた。 そのような意味からも研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、本年度の知見を基に①A2B型分岐-ABA型直鎖のトポロジー変換に伴う流動性ーエラストマー変換材料の開発、②線状-環状トポロジー変換に伴う高分子鎖の絡み合い効果による機械特性制御、などの研究を推し進める。 今年度のモデル高分子での研究から物性変換を目指す研究へとステージを上げることにより使用する高分子が重要であり、高分子系が変わることで合成面で少し工夫が必要となると思われる。例えば、①のA2B型分岐とABA型直鎖のテーマにおいて目的とするエラストマーを達成するにはB鎖は室温で液状の高分子を用いる必要がある。また②の線状-環状トポロジー変換では絡み合い効果を効果的に観察するには室温付近で軟化するような高分子が扱いやすい。 このような様々な制約があるが、基本となるロタキサン構造によるトポロジー変換は今年度の研究によって確立されたため、それほど大きな問題なく推進できると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた研究計画を少し変更し、基礎となる「ロタキサン型連結による高分子鎖のトポロジー変換」も研究分野として研究を行ったため、在庫として保有していた試薬で基礎的な研究を遂行することができた。 年度後半から予定通りの研究を行ったが、年度末に掛かってしまい試薬の発注を止めたため使用額が低い値となった。 本来の計画書どおりに研究を行うため、昨年度末に購入できなかった試薬類を購入することで計画どおりに予算を執行する予定である。
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