2014 Fiscal Year Research-status Report
低温での高分子溶液物性測定法の確立と低温に特異ならせん構造や液晶構造への応用
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25410130
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺尾 憲 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60334132)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子 / コンホメーション / 低温 / 小角X線散乱 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
主鎖がケイ素のみからなるポリシランは、その主鎖が共役性を持つことから、導電性高分子や半導体高分子として期待されてきている。ポリシラン鎖の溶液中での分子形態や分子間相互作用が応用の際に重要な薄膜等の物性にも、薄膜が溶液から調製されることを考えると重要な影響を与えることが予想される。側鎖に長鎖アルキル基を持つポリ(ジアルキルシラン)は、側鎖長の増加に伴い、様々な溶剤に高い溶解性を示す。その主鎖のコンホメーションは側鎖の構造に基づく内部回転制限に強く影響され、側鎖によってその剛直性が1桁以上変化する事、主鎖の共役長がコンホメーション(剛直性)と強い相関があり、剛直性が高くなるのに伴い、主鎖由来のUV吸収が著しくシャープになることが知られている。また、ある種のポリ(ジアルキルシラン)は-50℃以下の低温領域においてUV吸収が不連続に変化することが知られている。この変化は同時に主鎖の内部回転角に変化があったことを意味するので、分子の形態や分子間相互作用にも当然影響があるはずと考えられたが、このような低温で溶液中の分子形態を観測するのは一般に困難であるため、これまで研究されていない。 本研究では、当研究室で試作した溶液セルとクライオジェットを組み合わせ、3種のポリシラン溶液について広い範囲で小角X線散乱測定、極小角X線散乱測定を行い、サーモクロミズム付近での分子形態および高分子間の相互作用について詳細に調べた。みみず鎖理論と準二定数理論を組み合わせた解析より、常温で決定したUV吸収と分子形態の関係がサーモクロミズム温度以下の分子の形態を必ずしも反映しないこと、他方、サーモクロミズム温度付近で高分子間の相互作用が顕著に変化し、実際負の第二ビリアル係数が観測された。また、サーモクロミズム温度以下では会合体の形成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、低温測定用のセルについてはほぼ実用の域に達している。ポリスチレンと環状アミロース誘導体溶液についての論文、そして本技術を一部利用して行った関連研究の論文2報が掲載されているほか、ポリシランの系についてもすでに論文執筆を終え、投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで困難とされてきた高粘性溶媒、特にイオン性液体の系での測定に着手している。温度を変化させることによって溶媒(イオン性液体)のガラス転移温度付近での高分子形態の決定もある程度可能になってきており、剛直性高分子の分子形態とレオロジー挙動の相関を明らかにする事を目的として研究を進めている。
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Causes of Carryover |
今年度、実験と国内での学会発表のみを行い、海外での発表を行わなかったため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度のPacifichemにて研究成果を発表する予定である。
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Research Products
(12 results)