2014 Fiscal Year Research-status Report
三次元カルベン錯体を基盤とした多機能性動的球状集合体の創出
Project/Area Number |
25410133
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
富永 昌英 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60361507)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 三次元錯体 / 自己集合 / 有機金属錯体 / 動的挙動 / カルベン錯体 / 球状集合体 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外部刺激・環境に対応して構造や機能が変化する多機能性動的球状集合体の創製を目的としている。多座有機分子と多様な金属による有機金属結合からなる三次元錯体群を構築する。これらが自己集合した球状集合体について、従来の球状集合体にはない高次構造や特異な機能・物性を探索する。これまでに、多種多様な三座配位子からサイズや形状の異なる三次元錯体を構築した。また、側鎖に置換基を導入した錯体、対イオンの異なる錯体の作製に成功している。これらの三次元錯体群は、各種有機溶媒中で錯体の構造・化学特性に対応してサイズの異なる球状集合体を形成した。本年度は、ベンズイミダゾリウム塩をもつ配位子からの三次元錯体の構築と三次元錯体群からなる分子集合体の作製とその動的挙動・相転移を調査した。 1.ベンズイミダゾリウム塩をもつ三座配位子を合成した。これと酸化銀との反応により三次元錯体を高収率で得た。単結晶X線構造解析により、ねじれた三次元錯体であることを明らかにした。これを混合溶媒に溶かしたところ球状集合体の生成を確認した。イミダゾリウム塩からなる三次元錯体の球状集合体と比較して、アセトニトリル/トルエン中では球状集合体のサイズは小さかった。 2.イミダゾリウム塩をもつ三座配位子から形成された三次元錯体の結晶化過程を調べた。アセトニトリル/ジオキサンから錯体の単結晶が得られる。結晶化までの経時変化について、走査型電子顕微鏡を用いて調べたところ、単結晶の生成までに球状集合体を経由することが分かった。 3.有機溶媒中にカーボンナノチューブを加え、三次元錯体を滴下したところカーボンナノチューブが分散した。さらに三次元錯体を加えたところ、カーボンナノチューブが溶解した。これは、カチオン性の三次元錯体とカーボンナノチューブ間の静電的な相互作用に由来すると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、構造・化学特性が異なる三次元錯体と球状集合体ライブラリーを用いて、外部刺激・環境(温度、溶媒、金属・対イオン、ゲスト分子添加)に応じた球状集合体の構造転換などの動的挙動を検討した。1.三次元錯体および球状集合体において、N-ヘテロ環部位や側鎖置換基、対イオンの影響、2.球状集合体を経由した単結晶への相転移、3.温度変化による球状構造から他の集合体への形態変化、4.ゲスト分子添加による球状集合体のサイズ、安定性の改変や形態変化、に着目して研究を行った。 1.に関して、ベンズイミダゾリウム塩をもつ三座配位子に変えても同様にねじれたらせん様の三次元錯体であった。混合溶液中では、ベンズイミダゾリウム塩をもつ三座配位子から生じた三次元錯体の球状集合体の方がサイズは小さかった。2.に関して、アセトニトリル/ジオキサン混合溶媒中で、球状集合体を経由した単結晶への相転移が観測された。ほかの溶媒も同様に行ったが、単結晶へと相転移する溶媒はなかった。この結果から、ジオキサンの配位性や固体におけるパッキングに影響を及ぼしていると思われる。3.に関して、三次元錯体群を極性が低い混合溶媒に溶かし、低温にすると球状集合体のサイズが変化し、そしてネットワーク凝集体へと形態変化した。凍結乾燥するとファイバーへと形態変化することが示された。4.カチオン性の三次元錯体からなる球状集合体によって、カーボンナノチューブを分散・溶解できることが分かった。アダマンタン部位の効果を調べるために環状分子を構築した。各種溶媒中で中空球状・ネットワーク集合体を形成することから、アダマンタンの脂溶性が分子集合体の生成に重要であることが分かった。 以上の結果・知見は、本年度の目標をおおむね達成しており、次年度以降の球状集合体の触媒・分子認識などの球状集合体の機能開拓に向けて、重要な知見が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々な構造と特性をもつ球状集合体ライブラリーやそれらの多様な外部刺激による動的挙動を活用して、以下の機能の改変および新機能の発現を目指す。特に、カルベン錯体の触媒作用に着目して、研究を行う予定である。 1.これまでに骨格・サイズ・対イオン・側鎖の異なる多種多様な三次元錯体群を構築している。これらの三次元錯体からなる球状集合体を用いて、球状集合体の内部空間への蛍光性物質の包接能を検討する。また、三次元錯体・球状集合体の構造安定性や金属種・対イオンに依存した選択的包接能を調べる。あわせて、内包されたゲスト・蛍光性分子の膜透過能を評価する。 2.球状集合体の動的挙動による構造・形態変化を通じた、内包ゲスト分子の放出を実現する。温度変化による球状集合体のサイズ変化、球状集合体→ネットワーク集合体への形態変化を通じた内包ゲスト分子の放出を目指す。 3.これまでに多種多様なカルベン金属錯体が触媒作用を示すことが報告されている。そこで、様々な金属を導入した三次元錯体の触媒能(基質選択性・位置選択性など)を調査し、錯体の触媒能が集合体のサイズや形態にどのように影響するか検討し、高効率な自己集合性触媒の開発を目指す。特に、パラジウムを導入した三次元錯体を構築し、この錯体からなる球状集合体の作製と触媒能を検討する。また、数百ナノメートルサイズの球状集合体であることから、再利用可能な触媒システムの開発を試みる。
|
Research Products
(2 results)