2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞リソグラフィーによる異種細胞配列体の形成と電気化学的機能評価
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25410148
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40361167)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 誘電泳動 / 細胞配列 / 電気化学顕微鏡 / 細胞アッセイ / 細胞センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電泳動法を利用して,各種異種細胞パターンの形成を行った.平面方向に走査可能であるニードル型のマイクロ電極を利用した正の誘電泳動によるパターン作製では,ポーラスアルミナ膜上に細胞や微粒子の配列体を作製できた.この手法は,誘電泳動のプローブであるマイクロ電極をxyz方向に自由に稼働できるポジショナーに搭載しているため,任意の細胞や微粒子パターンをポーラス膜上に形成できる.この手法を用いて,ポーラス膜上に細胞や微粒子を使って文字を書くことデモンストレーションを行った.シリコン基板上に規則性のある微細孔を有するポーラス基板を用いると個々の微細孔に微粒子や細胞を誘導し,微粒子の規則配列体を得ることができた.さらに,パターン作製後,異種類の細胞を導入することにより,異なる種類の細胞の任意配列体を得ることができた. マイクロウェル(25万個)アレイ電極を用いると,正の誘電泳動により各ウェル内に1分で異種細胞ペアを作製できた.異種細胞形成率は約70%であり,極めて迅速に15万の異種細胞ペアを形成できた.この異種細胞ペアに矩形波電気パルスを印加する電気融合法による高効率なハイブリッド細胞形成に着手した. また,ラインパターン電極を用いた異種細胞の交互配列パターニング,ステンシルを用いた細胞の海島状配列体およびライン配列体の作製を行った.基板上に配列化したC2C12筋芽細胞を筋管細胞へと分化誘導し,ライン状に配列した筋管細胞を得た.さらに,電気化学顕微鏡を用いて単一細胞レベルでの呼吸に伴う酸素消費をイメージとして捉えることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度および2年目に予定していた研究項目をすべて遂行し,予想以上の研究成果を挙げることができた.ニードル型のマイクロ電極を用いた誘電泳動では,微粒子や細胞をパターン形成基板としたアルミナ膜上へ誘導し配列体の作製が可能であった.化学結合法および細胞接着性分子を利用することにより,配列後の細胞パターンをその場に固定化しパターンを維持することができた.パターンのフレキシビリティーを示すために,細胞や微粒子でアルファベットを描いた. また,鋳型電極パターンを用いた細胞リソグラフィーを行った.固体基板上に微粒子や細胞のパターン転写を行い,その基板を取り出すことにより異なる基板上に繰り返しパターン作製できた.この手法を応用し,マイクロウェルアレイ電極を用いたマイクロウェル内への細胞の迅速導入および異種細胞ペアリングを達成した.また,筋芽細胞のラインパターニングとライン状配列化筋芽細胞の分化誘導によるライン配列筋管細胞を取得できた.この筋管細胞に電気パルスを印加すると,パターン化細胞は物理的な収縮・緩和を繰り返し拍動させることができた.ニードル型マイクロ電極を用いた電気化学法によりこの拍動する細胞の酸素消費量の減少を計測し単一筋管細胞ラインの呼吸活性を評価できることを示した.これらは,当初予定していた研究項目から派生して創生されたあらたなテーマであり,これらについて鋭意積極的に検討を進め有意義な成果を得ることができた. よって,本研究は当初予定以上に研究が遂行できていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に提案することができた各種の迅速で簡便な細胞アレイ形成手法について,2年目にはデバイスの作製,改良を繰り返し,異種細胞パターニングの手法として具象化することができた.最終年度は,「細胞配列化」と「細胞センサ」の融合を遂行する.誘電泳動による迅速で正確な基板上への細胞パターンの形成を行い,そのアレイ化細胞の遊走および呼吸活性を指標としたアッセイ系を構築する.ポーラスアルミナ膜上にニードル型マイクロ電極を用いた誘電泳動で細胞の任意ライン配列体を作製する.このシステムの上面チャンバーに微小管合成阻害剤,光合成電子伝達阻害剤等を導入し,配列化細胞の走行性および呼吸による酸素消費量を調査する.さらに,筋芽細胞の配列と分化によるパターン化筋管細胞を取得し,単一筋管細胞の拍動に伴う酸素消費量計測を行う.ポーラスアルミナ膜上にシロキサンポリマー製のマイクロステンシルを貼付する.正の誘電泳動による筋芽細胞をステンシルのウェル内に導入して培養する.筋芽細胞はウェル内でコンフルエントにっ増殖するためウェル内でパターン状に分化誘導されライン状の筋管細胞アレイを得ることができる.この状態で電気パルスにより拍動を誘起し,マイクロ電極を用いた電気化学顕微鏡により単一筋管細胞の単一拍動による酸素消費量を調査する.また,酵素修飾マイクロ電極を用い単一筋管細胞の拍動に伴うグルコースの取り込みと乳酸の放出を定量し,単一細胞のエネルギー代謝について詳細に調査する.また,独立した電位制御と電流計測が可能な400個のマイクロ電極が集積化されたBio-LSIチップを用い,ライン状細胞活性の電気化学イメージングを行う.得られた結果を,電気化学会および分析化学会で成果報告する予定である.また,国際誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
本年度の最後のシステム実証実験において、抗原抗体反応を利用した免疫結合を利用するため、抗体の新規購入を計画していたが、国内在庫が切れ海外輸入扱いとなった。よって、3月中の納品が不可能であったため、次年度に繰り越して支出することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の当初計画通り、抗体の購入に使用する。
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Research Products
(46 results)