2013 Fiscal Year Research-status Report
電気化学センサーを用いる脳内グルタミン酸計測の高度化と応用
Project/Area Number |
25410149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
菅原 正雄 日本大学, 文理学部, 教授 (50002176)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電気化学センサー / 神経伝達物質 / グルタミン酸 / 長期増強現象 / 海馬断片 |
Research Abstract |
本研究では、脳海馬断片を試料に用いて、電気化学センサーの信号と電気生理学的信号とを同時、かつreal timeに記録することを行い、脳内のグルタミン酸濃度を計測する優れた高度化されたツールを開発することを目指している。それと同時に、神経可塑性の分子機構に関して、グルタミン酸濃度の実測に基づいて、前膜からのグルタミン酸放出の増加があること(前膜説)の実験的証拠を積み上げることを行う。本年度は以下の点について検討した。 (1)急性海馬スライスを対象に、電気および化学刺激を与えた時に放出されるグルタミン酸をガラスキャピラリー酵素センサーにより測定する際、電気的閉回路が形成されるために容量性電流が生じる。そのため容量性電流とグルタミン酸電流を識別する方法について検討した。その結果、高頻度刺激(100Hz) の終了直後に残存するグルタミン酸電流(容量性電流をふくまない)と電流サンプリング間隔1 秒を用いて観測される電流値はほぼ一致することを見出した。即ち、電流サンプリング間隔1 秒での測定が高頻度刺激で放出されるグルタミン酸の計測に有用なことが分かった。これらの結果をもとにマウス海馬断片のCA1神経領野で実測したグルタミン酸濃度は、長期増強現象が生起する場合は著しく高いことを見出した。 (2)NOの関与する逆行性神経伝達経路とグルタミン酸放出の関係を検討するための手始めとして興奮性シナプス後電位の測定をNO酵素系の阻害剤の共存下で行った。その結果、興奮性シナプス後電位が抑制される場合と抑制されない場合の二通りに分かれた。今後、その理由をさらに検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本年度の研究計画のうち、電気刺激がグルタミン酸センサーに与える影響について検討を進めた結果、長期増強現象を引き起こすのに必要な高頻度刺激を与えても、その影響を受けずにグルタミン酸電流を計測することに成功した。それらの知見を基に長期増強現象が引き起こされる場合と起こらない場合の比較を行い、グルタミン酸濃度は前者の場合に著しく高いことを明らかにした。この結果は、前膜からのグルタミン酸放出が長期増強現象の生起に関係していること、および電気生理学分野において興奮性シナプス後電位の最大値の40%において計測を行うことの意味について、グルタミン酸の側から実験的根拠を与えたことになる。 (2)埋め込み型パッチセンサーの構築は以前から続けており、本研究においても継続しほぼ順調に進行した。今後、長期増強現象とグルタミン酸放出量の関係を検討する際に応用する。 (3)一酸化窒素(NO)が関わる逆行性神経伝達系についても実験をスタートした。その結果、高頻度刺激によって変化する興奮性シナプス後電位の変化が大きい場合には、阻害剤が有効であるが、その変化が小さい場合には阻害剤による抑制効果が見られなかった。この結果は、他の研究者によって報告されている文献の結果とは異なるものである。そのため、データの信頼性を高めるために多くの繰り返し実験をおこなった。結果が異なる理由についてはさらなる検討が必要である。 以上のように、本研究の研究計画はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内グルタミン酸の計測においては、低頻度刺激(2Hz)で放出されるグルタミン酸の計測も重要、かつ必要である。その際、センサーの応答電流に電気刺激によって発生する容量性電流の影響がどの程度あるのか、また阻害剤の添加によってシナプス後膜の活動を止めた場合に容量性電流の影響がどの程度あるのかなどを検討する必要がある。それらの解析に基づいて細胞外グルタミン酸濃度を反映したグルタミン酸電流を得る方法を構築する。さらに、後膜に存在するグルタミン酸受容体阻害剤の共存下で興奮性シナプス後電位とグルタミン酸電流の同時計測を行い、電気的および化学的長期増強現象の発現に際してシナプス前膜からのグルタミン酸放出の寄与を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はNOの神経伝達系の阻害実験について多くの時間が必要であったため、グルタミン酸測定と興奮性シナプス後電位の同時測定に費やす時間がやや不足した。そのため、センサーの作成に要する費用、およびシナプス後膜の活性を阻害する実験に関する費用が予定より少なくなった。 これらの費用は次年度において,グルタミン酸測定と興奮性シナプス後電位の同時測定の際に必要となる酵素、阻害剤の購入に有効に使用できる見込みである。
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