2013 Fiscal Year Research-status Report
バイオ分析のための800nmを超える高輝度蛍光色素の開発
Project/Area Number |
25410152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 真一 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (50317294)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロロフィル / 蛍光 / 分子認識 / アニオン / ウレア / クルチウス転移 |
Research Abstract |
バイオセンシングへの応用の可能性から、近赤外領域の波長に高輝度な蛍光を持つ色素分子の開発が望まれている。今年度は、藍藻(シアノバクテリア)からの抽出より得られるクロロフィル-aを出発原料に有機合成変換を行い、見かけ上のストークスシフトが大きなクロリン骨格上に特定のアニオンを認識できるセンシング部位を導入した蛍光イオノフォアを新規開発した。 3位にカルボキシ基を有するクロリンとジフェニルリン酸アジドを、トリエチルアミン存在下トルエン中で還流させるとイソシアナートが得られた。この中間体は不安定で単離精製できなかったため、続けて水やブチルアミンやベンジルアルコールと反応させたところ、対応するアミンやウレアやカルバメートがそれぞれ35, 43, 65%の収率で得られた。 ウレア誘導体のジクロロメタン溶液中に酢酸テトラブチルアンモニウム塩を加えたところ、可視吸収スペクトルにおいて等吸収点を有するスペクトル変化が見られ、Qy吸収帯は665 nmから658 nmへとブルーシフトした。また、蛍光スペクトルでも酢酸イオンの添加に伴い極大が668 nmから660 nmへと変化した。アニオン添加量と吸光度変化を解析することにより、クロリンと酢酸イオンの1:1の会合定数は4000 M-1と算出された。リン酸二水素イオンおよび塩化物イオンの添加に対しても同様のスペクトル応答が見られ、会合定数は2400 M-1および3500 M-1となった。 以上のように、機能性クロロフィルの例として、クロリン特有のQyピークを利用した長波長領域でのアニオンセンシングができることを明らかにした。また、クルチウス転移を利用することにより、クロリン骨格の3位に窒素官能基を直結する誘導体の合成ルートが確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の実施計画に挙げた蛍光色素の一つを合成することに成功し、基礎的な分光学的データの収集を行って学術論文に報告することができた。すなわち、クロロフィルを原料として、特定のアニオンを認識できる結合部位を導入した蛍光イオノフォアへと誘導することで、長波長領域でのアニオンセンシングを実現した。クロロフィル関連の研究の中で、アニオン補足能を持つクロリンの合成は初めての例であり、バイオセンシングへの応用につながる成果である。 今回の蛍光分子は応答領域が600nm後半であり、目標とする800nm以上の近赤外領域に達していないことから、バクテリオクロリンの利用など更なる骨格の改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
・より長波長領域に発光極大をもつ色素の開発を目指して、紅色光合成細菌の生産する色素(バクテリオクロロフィル-a)を素材とした蛍光分子の合成と機能化を進める。 ・クロロフィル類の光開裂反応を検討し、天然の渦鞭毛藻ルシフェリンやオキアミルシフェリンの構造に近い色素を作製して生物発光特性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日程の都合上、予定していた学会に参加できなかったため旅費を使用しなかった。 実験補助アルバイトの人件費として使用。
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Research Products
(7 results)