2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノ結晶の電子スペクトルシミュレーターの開発と高速化
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25410159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉川 英樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (20354409)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Monte Carlo simulation / 干渉性弾性散乱 / X線光電子分光 / 結晶性試料 / 表面分析 |
Research Abstract |
1.干渉性弾性散乱における可干渉の空間サイズの検討 本研究においては、結晶性試料における干渉性弾性散乱をMonte Carlo simulationで扱う。その際に、弾性散乱が可干渉性を保つ空間サイズをSimulationコードの中で決定しておく必要があり(そうでないと電子が無限長の可干渉性を持つことになり実験結果と整合しない)、この空間サイズはeffective attenuation lengh (EAL)またはmean escape depth (MED)を上限値とする。本研究では、X線励起の光電子を扱うため、EALもMEDも光電子の発生時の非対称パラメーターの影響を強く受ける。そこで今年度は、非対称パラメーターの影響を汎用的に扱えるMEDに焦点を絞り、非対称パラメーターを考慮したMEDの定式化を検討した。 2.データベースの記述形式の検討 干渉性散乱を考慮した弾性散乱微分散乱断面積のデータベース化とその公開が本研究の目的の一つであるため、そのデータベース記述形式をXMLを行うことを検討し、国際会議15th European Conference on Applications of Surface and Interface Analysis (ECASIA'13)や表面科学会にて成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.干渉性弾性散乱における可干渉の空間サイズの検討 本研究の目的である結晶性試料における干渉性弾性散乱効果をMonte Carlo simulationで扱うにあたって、入力パラメーターとなる弾性散乱の可干渉長を求める手法を検討した。可干渉長の上限値としてmean escape depth (MED)に焦点をあてて、定式化を行った。定式化は、光電子の非対称パラメーター、運動エネルギー、放出角度、および物質の構成元素に関して行った。可干渉長は、本研究で開発するMonte Carlo simulationの内部において使用する光電子発生のクラスターのサイズを決めるのに必要なだけでなく、可干渉長以下の厚さを持つ表面層とそれよりも深層とでsimulationのアルゴリズムを替える必要があるため、可干渉長を効率的に求める手法の開発は本研究の遂行に不可欠のものである。本研究の成果は、近く論文投稿する予定である。 2.データベースの記述形式の検討 干渉性散乱を考慮した弾性散乱微分散乱断面積のデータベースの記述形式については、散乱断面積の値を記述するだけでなく、その散乱断面積を使って計算を行った(実験結果と比較できる)試料外に放出された光電子の結果まで記述できることが必要である。シミュレーションのデータベースは、シミュレーション内の各内部パラメーター(散乱断面積やMEDなど)とシミュレーション結果を1:1に対応づけて記録することによって、ユーザーが内部パラメーターの妥当性を容易に理解することができる。そのため、本研究で目指すデータベースは、これを意図した仕様とした。その仕様の基本部分は、国内外の複数の学会で示し、多くの方の関心を得ることができた。この成果は論文にまとめ投稿し、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、可干渉長の上限値としてmean escape depth (MED)をMonte Carlo simulationコードに組み込み、干渉性の弾性散乱微分断面積を使って、試料外で観察される光電子の角度分布を計算を行う具体的なアルゴリズムを開発する。干渉性の弾性散乱微分断面積のデータベースについては、仕様の細部を詰める。
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