2013 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドを介した配位子固定化金ナノ粒子のワンポット合成と有害金属の高感度比色検出
Project/Area Number |
25410161
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
下条 晃司郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (50414587)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / ペプチド / 配位子 / 有害金属 / 比色センサー |
Research Abstract |
有害金属イオンは生物の体内に濃縮されやすい特徴をもつため、微量濃度でも環境に放出されれば人体に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、有害金属イオンを選択的かつ高感度に検出するシステムの開発が望まれている。 一方、金ナノ粒子は可視光領域に表面プラズモン共鳴が生じ、その粒子の大きさに依存して色が変化する分光学的性質を有している。これまでに金ナノ粒子表面に、特定の金属イオンに対してのみ結合能を有する配位子を固定化することで、金属イオン応答性の比色センサーが開発されている。一般的に、配位子固定化金ナノ粒子の合成は、クエン酸等の還元剤により金ナノ粒子を合成するステップとチオール基を介して配位子を固定化するステップの2ステップから構成されるため、より簡便かつ迅速な新たな合成手法が望まれている。 本研究では金結合性ペプチドを介して配位子を固定化した金ナノ粒子をワンポットで合成し、有害金属イオンを高感度で検出する比色センサーを開発する。具体的には金結合能を有するペプチドに特定の有害金属イオンに対して選択性を有する配位子を導入し、金イオンと反応させることで、金ナノ粒子の合成と配位子の固定化を同時に行う。さらに、配位子と有害金属イオンの結合を介して金ナノ粒子の凝集を誘発し、粒径増加に伴う色変化によって有害金属イオンを高感度に検出する。 本年度は配位子と金結合性ペプチドを融合した新しい配位子融合ペプチドを合成し、配位子固定化金ナノ粒子をワンポットで合成する手法を確立した。また、反応条件を変えることで金ナノ粒子の粒子径を制御することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は配位子融合ペプチドを用いて金ナノ粒子の合成と配位子の固定化を同時に行う手法を確立し、反応条件の最適化と粒子径制御について検討を行った。具体的に実施した実験内容を下記に示す。 1.カルボン酸とカルバモイル基をエーテル鎖で連結したジグリコールアミド酸(DGAA)配位子と金に対して高い結合性を示すペプチド(A3ペプチド:AYSSGAPPMPPF)を融合したDGAA融合A3ペプチドを固相合成法により合成した。 2.DGAA融合A3ペプチドをHEPES緩衝剤溶液中で金イオンと反応させることで、金ナノ粒子の合成と配位子の固定化を同時に行うことに成功した。得られた金ナノ粒子は紫外可視分光光度計により表面プラズモン共鳴バンドがあることを確認し、動的光散乱法(DLS)による粒径測定、透過型電子顕微鏡(TEM)による金ナノ粒子の観察を行った。 3.反応条件として、DGAA融合A3ペプチドおよびHEPES濃度を変化させることで、金ナノ粒子の粒径を制御することに成功した。 4.金ナノ粒子に固定化されているDGAA融合A3ペプチドの固定化量を算出した。 以上の結果より、予定していた実験計画どおりに研究が進展しており、ほぼ目標が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、前年度に合成法を確立したDGAA固定化金ナノ粒子を用いて有害金属イオンに応答する高感度比色センサーを開発する。DGAA配位子はHg2+に対して高い結合能と選択性を有する。したがって、DGAAを固定化した金ナノ粒子にHg2+を加えると、配位子-Hg2+間の結合を介して金ナノ粒子が凝集し、金ナノ粒子の色変化によってHg2+を選択的に比色検出できることが予想される。まずはHg2+によるDGAA固定化金ナノ粒子の凝集反応を、目視による色の変化、紫外可視吸収スペクトル、DLSおよびTEMにより観察し、Hg2+に対する結合性を評価する。また、コントロール実験として、DGAA未修飾のA3ペプチドを固定化した金ナノ粒子を用いて同様の実験を行い、DGAA骨格由来の結合性を立証する。次にHg2+以外の金属イオンに対する結合性を検討することで、他金属イオンによる阻害・干渉を評価し、様々な金属イオン共存下におけるHg2+の選択性を検討する。また、金ナノ粒子の凝集とHg2+濃度との相関関係を明らかにすることで、Hg2+に対する検出限界を算出する。検出限界は金ナノ粒子の粒子径に大きく依存することが予想されるため、様々な粒子径をもつ金ナノ粒子を作製し、検出感度の向上を図る。また、水道水のような実試料を溶媒として同様のセンシング実験を行い、実用性について評価する。さらにHg2+の体内蓄積メカニズムを解明するために、細胞内に取り込まれたHg2+をDGAA固定化金ナノ粒子でマーキングし、その光応答性を観察することで細胞内のHg2+の動態挙動を明らかにする。
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Research Products
(6 results)