2015 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体を用いた高集束性液滴ビーム源の開発:有機系試料の高精度SIMSへの展開
Project/Area Number |
25410163
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 幸雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (60415742)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 表面分析 / 二次イオン質量分析 / SIMS / イオン液体 / エレクトロスプレー / ビーム / プロトン付加 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry: SIMS)は、表面分析法の一つである。SIMSは、一次イオンビームを試料表面に照射することで生じた二次イオンを質量分析することを原理とする。分析対象が無機材料の場合には、酸素やセシウムあるいはガリウム等のイオンビームが用いられ、高い面分解能のSIMS分析が可能となっている。一方、有機材料の場合には、イオンビーム照射に起因する有機分子の損傷や断片化(=フラグメンテーション)が避けられず、分子量の大きな二次イオンはほとんど検出できないという問題があった。しかし、多数の原子から構成されるクラスターイオンを一次イオンビームとして用いることで、比較的大きな有機分子も検出できるようになり、従来から応用されてきた半導体産業のみならず、化学分野等においても応用範囲が広がっている。 本研究は、低蒸気圧かつ高導電性という特徴を有するイオン液体を高真空中でエレクトロスプレーする方式を用いた帯電液滴ビーム源を開発し、有機・生体関連分子の二次イオン化技術の実証を目的とするものである。そこで本研究では、帯電液滴ビーム源を開発し、SIMS装置と組み合わせることでイオン液体ビーム照射による有機試料のSIMS分析を実施した。はじめに、高い導電性を有する非プロトン性イオン液体を用いてSIMS分析が可能であることを実証できた。しかし、二次イオン化率が低いことが課題であることも明らかとなった。そこで、イオン液体の種類を変えてプロトン性イオン液体を用いてSIMS実験を行った。その結果、プロトン付加反応によって分子イオン強度が大幅に増大することがわかった。つまり、SIMS応用の観点からは、プロトン性イオン液体の利用が望ましいことがわかった。
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